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赤ちゃんの血液型は変わるのか?

[2023.06.09]

愛育こどもクリニックでは1か月健診の際に血液型検査をおすすめしています。
とはいえ、自費だし、任意だし、赤ちゃんの頃の血液型って変わるっていうし、やった方がいいのかな、やめた方がいいのかな、と悩まれるかと思います。

 

なので、その判断の一助になればと思い、血液型の解説と自分の考えを解説いたします。

 

血液型検査に関しては、以下の二つの論点があると思います。
①血液型を調べるか、調べないか
②いつ血液型を調べるか

 

①血液型を調べるか、調べないか

まずぶっちゃけた話、ABO式血液型に関しては調べる「医療上の」メリットはありません。

Rh式血液型については、多少メリットがあるかもしれません。Rh式血液型についてはこちらの記事で解説しております。今回はABO式血液型に限定して話を進めていきます。

 

輸血などをする際に血液型の情報が必要になった場合は、必ず「その時点で」検査をします。昔調べた血液型を申告されてもそれを採用することはありません。万が一その申告が間違っていた場合に致命的な医療事故につながる危険性があるからです。だから逆にいえば事前に血液型を知っていなくても、医療的に困ることはありません。

 

「将来輸血や手術をするときに困るといけないから」という理由ならば、わざわざお金を払って痛い思いをして検査をする必要はまったくないといえます。

 

ただ、現代の日本人にとって、ABO式血液型は比較的認知度の高い個人情報だと思います。コミュニケーションのタネになったり、血液型別性格診断などで自己を見つめるきっかけになったり、一部の学校の願書に書いたり、(本当に自分の子か簡易的に確認したり)、医療や科学以外の面で、血液型を知る動機はあると思います。これらが自分あるいは自分の子にとってどれくらいの意味があるかを考え、血液型を調べるか検討すればよいのかなと思います。

 

医療上の意義もなく針を刺して血液をとるなど野蛮だ!と思う方は血液型検査はすべきではありません。

 

②いつ血液型を調べるか

次に、「血液型を調べることにする」という前提で、いつ検査をするのがベストか、という問題についてお話しします。

 

「赤ちゃんの血液型は将来変わる可能性がある」という話を聞いたことがあるかもしれません。

 

この意味を理解するためには血液型検査の説明が必須なのですが、血液型検査の理解は研修医でも苦戦するやや複雑な内容ですので、ちょっとわけがわからないかもしれませんが、以下なるべく簡単に説明してみますのでお付き合いください。

 

ABO式血液型というのは、要は赤血球にくっついている抗原という物質の型(種類)のことです。抗原には「A抗原」「B抗原」の二種類があって、「A抗原」だけある人がA型、「B抗原」だけある人がB型、「A抗原」と「B抗原」両方ともある人がAB型、両方ともない人がO型、というわけです。

 

なので、血液型を知りたければ抗原の種類を調べればよく、そのための検査が血液型検査(専門的にはオモテ試験といわれます)です。

 

ところが、生まれたての赤ちゃんではこの抗原の発現率が低いため、検出されないことがあるのです。
例えば、本当はA型(A抗原がある)なのに、A抗原が検出されないためO型という結果になる。という具合に、血液型を誤って判定してしまうことがあります。その場合、大人になって再検すると、今度はA抗原が検出されて「A型」と出るので、あたかも血液型が変わったかのように見えることがある、ということです。

 

「血液型が変わる」というのは、血液型そのものが変わるわけではなく、赤ちゃんは検査結果のエラーが出やすい、という意味ですね。

 

で、この抗原発現率が安定してくるのが4歳くらいだそうです。オモテ試験の正確性が向上するとともに、この年齢になると、抗原に対応する「抗体」という物質もあわせて調べる「ウラ試験」というのも行うことで、より正確な検査結果が得られるのです。なんかハンター試験みたいな名前ですね。

 

というわけで、正確な血液型検査をしたくば4歳以降で、と言っている人が世の中にはとても多いです。

 

しかしどうでしょうか。こんな言い方はよくないかもしれないですが、本人の記憶に残らない(残りにくい)赤ちゃん時代にサッと採血してしまうのと、怖くて嫌がって泣き叫ぶ4歳児を押さえつけて採血するのでは、圧倒的に後者の方が「心へのダメージ」が大きいのではないかと思います。

 

一方で、赤ちゃんの血液型検査は不正確、といいつつ、実際検査のエラーが出る割合を明記した文献は意外と見つからず、一体どのくらい不正確なのかは闇の中です。僕がNICUに勤めていた時に検査が不正確で困ったことは一度もありません。世間で声高に言われるほど、エラーが出る確率は高くはないのではないかと推測します。

 

さらに、前述のように、血液型を知る動機は医学的なニーズではなく、個人情報としての意味合いが強いため、万が一間違っていたからと言って、本人が大きな不利益を被ることはありません。4歳まで待つことによる正確性(おそらく微々たるものと思われる)の向上と、本人への心へのダメージの違いを天秤にかけると、一概に待つ方が良いとは僕には思えません。

 

以上より僕個人としては、血液型を調べるのであれば、新生児期にやるか、もしくは何か採血する機会があったときについでに調べてもらう(その場合大人まで機会が無い可能性もあります)かのどちらかが良いかと思います。大きくなって物心ついたこどもから血液型のため「だけ」に採血するのは避けたいところです。それなら自分で物事を判断できる年齢になってから本人の意思で希望すべきです。

 

 

そんなわけで愛育こどもクリニックでは1か月健診の時に血液型検査をおすすめしているというわけです。

この記事を読んで、血液型検査をやろうと思った人もやめておこうと思った人もいるかと思います。いろいろな意見があるテーマですので、各々でよく考えて決めていただければと思います。

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