花粉症の治療薬まとめ
花粉症の治療は、花粉の飛散開始日または少しでも症状が出始めたときから開始すると、ピーク時の症状がより緩和できます。
個人的には症状のない人は1月下旬頃からの治療開始することをおすすめしています。
今回は花粉症治療でよく使う薬について解説します。
抗ヒスタミン薬
ご存じ「鼻のお薬」と呼ばれる超メジャーな薬です。作られた時代により「第一世代」と「第二世代」があるのをご存じでしょうか。
世代による最も大きな違いは眠くなる作用の強さです。
ヒスタミンという物質は鼻炎をおこしますが、実は脳でも作用して目を覚まさせます。抗ヒスタミン薬は脳ではこの覚醒作用をブロックしてしまうので、眠くなったり注意散漫になったります。
この脳への作用を極力減らし、鼻炎症状にだけ効くように改良したものが「第二世代」です。
よく処方されるのが
●第一世代:シプロへプタジン(ペリアクチン)、ジフェンヒドラミン(レスタミン)、d-クロルフェニラミン(ポララミン)
●第二世代:レボセチリジン(ザイザル)、フェキソフェナジン(アレグラ)、オロパタジン(アレロック)、エピナスチン(アレジオン)、メキタジン(ニポラジン)、ロラタジン(クラリチン)、ケトチフェン(ザジテン)※
※ケトチフェンは分類は第二世代だけど、脳への作用は第一世代と比べても高い部類に入るので、実質的には第一世代扱いです。
第一世代にも利点がないわけではないですが、現在小児科クリニックの臨床で第一世代を使うべき状況はほぼありません。
昔は「眠くなるほどよく効いている」というイメージがあったそうですが、それは間違いです。眠くなる作用と鼻炎への効果は別物です。
また、いまだにかぜに対して「鼻の薬」といって処方されることが多いですが、抗ヒスタミン薬はあくまでアレルギー性鼻炎の治療薬であって、かぜの鼻炎には効きません。熱性けいれんの持続時間が長くなる恐れがあり、発熱しているような小児には禁忌に近いです。
話がそれましたが、そんなわけで原則としては花粉症には第二世代の抗ヒスタミン薬を使うことになります。同じ世代の薬でも細かな違いはあるため、そのあたりは受診時に相談すると良いかと思います。
点鼻ステロイド
ガイドラインで強めに推されている薬。鼻にシュッとする薬です。単独でも抗ヒスタミン薬と同等かそれ以上の効果もあるとか。
自分で使った感じは即効性があると思っていましたが、作用機序的には遅発性の症状をおさえるらしいです。ただ連用することで即効性も出てくるそうですので、シーズン中の常用薬としておすすめです。薬剤が全身に回らないため副作用も少なく、嫌がらない子ならばぜひ試してみてほしいお薬です。
ロイコトリエン拮抗薬
プランルカスト(オノン)、モンテルカスト(シングレア)といった薬です。喘息の予防薬として登場することが多いです。
アレルギー性鼻炎に対しては、鼻づまりが強いタイプによく効くようです。これも理論上は単剤でも効果があるそうですが、実際は抗ヒスタミン薬と併用することが多いです。
花粉症で受診する際は、鼻が垂れて困るのか、詰まって困るのかをつたえると良いかと思います。
漢方
唯一エビデンスのある薬として「小青竜湯」があります。まあ、漢方なので、苦手な子も多いと思いますので、他の薬だけではいまいち症状が緩和されないような場合に使うことがあります。
市販薬の注意点
アレルギー性鼻炎の薬として売られている抗ヒスタミン薬はほとんど第二世代なので、処方薬と同じように使って大丈夫です。
総合感冒薬(いわゆるかぜ薬)には第一世代の抗ヒスタミン薬が混ぜられていることが多いので、注意が必要です。
点鼻薬で血管収縮薬・交感神経刺激薬の含まれるものも注意です。見た目は点鼻ステロイドと似ていますが、内容は全然違います。短期的には鼻閉症状を改善するものの、ずっと使っているとだんだん効き目が弱くなり、効果が切れたときのリバウンドで鼻閉が強くなるため、漫然と使い続けるのはおすすめできません。
舌下免疫療法
花粉シーズンになると問い合わせが増える舌下免疫療法ですが、花粉シーズンには開始できません。使い始める場合はシーズン終了後(5月頃)になります。
舌下免疫療法についての詳細はHPの特設ページをごらんください。
2週にわたって花粉症について解説してきました。とにかく言いたいことは、花粉症は薬で症状が緩和されるので、躊躇せずにどんどん治療していきましょう、ということです。
日頃かぜに対しては、あんまり効きませんよ~とか言って薬を出し渋るため「愛育さんは自然治癒力を推している」的な誤解を招きがちですが(涙)、それは単にエビデンスがないからで、エビデンスがある薬についてはきちんと使ってあげた方が、こどもが楽になる可能性は高いはずです。
花粉症でお悩みの方はぜひご相談くださいね!