必ず成功するダイエット法!
クリスマスに大晦日、お正月と、たらふく飲み食いしがちなイベント目白押しの年の瀬に差し掛かりました。
今回は、ダイエットについて、小児科的に(?)お話ししてみたいと思います。
みなさん自分の体型に満足していますか?
あれこれ目新しい〇〇ダイエットを見つけては、よし頑張るぞ! ってしょっちゅう気合を入れているのに、年単位で見ると一向に体型が変わっていない、なんてことはありませんか? 「来週からダイエット」がもう何年も続いていませんか??
ダイエット法というと俗っぽくてあまり医療と関係ないように見えますが、実はこれ、健康を考える際の超重要事項です。「医食同源」という言葉があるように、食生活は健康にとって非常に重要な要素です。予防接種や健診をはるかに上回る予防法と言っても過言ではないでしょう。
であれば、ダイエットも流行りに乗ったり一時期のイベント的にやるのではなく、きちんと医学的に取り組むべきでしょう。
集中治療に学ぶ栄養のエッセンス
生まれた体重が1000gに満たない超早産児や、人工呼吸管理が必要になるような超重症なICU入院児は、自分でパクパク食べたりは当然できませんので、医療者がどんな栄養をどれくらい投与するか決定しなければなりません。このとき、巷で流行する〇〇ダイエットはまず採用されません。(あたりまえ)
彼らは生きるか死ぬかの境目で戦っており、そのために必要十分な栄養管理が求められます。
このとき考慮されることは、総投与カロリーのほか、糖質、タンパク質、脂質、そしてビタミン・ミネラルなどの微量元素です。いわゆる5大栄養素というやつです。かつて誰もが小中学校で習った栄養の基礎は、実は集中治療でも重要な考え方です。
集中治療中の患者は、5大栄養素の投与量を誤ると症状増悪や最悪の場合死につながるため、重症であればあるほど針の穴を通すような「正解」を選択する必要があります。
一方で、健康な人は、わりと適当にやっても、体が自動的に調節してくれます。断食したり、暴飲暴食をしても、なんやかんや体が埋め合わせをしてくれて、体調を崩さず過ごせたりもします。だから、この5大栄養素を適切に摂取するという感覚が薄れてしまいます。しかしそれはあくまで体が頑張ってくれているからです。その代償として、脂肪が増えて肥満になったり、筋肉が減ってがりがりになったりします。
健康的な体型を作るためには、集中治療にならって体に負担をかけないような5大栄養素の「正解」を追求することが重要です。
最強の教科書
5大栄養素を適切に摂取するために必要な知識を完璧に習得できる最強のツールがあります。それは「日本人の食事摂取基準」です。ここに、こどもから大人まで、あなたが摂るべき5大栄養素の量がすべて書かれています。はっきり言ってどんなダイエット本を読むより、これを読んだ方が圧倒的に正しくためになる知識が得られます。
文字が多くて通読するのは大変なので、とりあえず各論の「エネルギー」「たんぱく質」「脂質」「炭水化物」「エネルギー産生栄養素バランス」だけでも読んで、実践してみましょう。
やってみよう!
食事摂取基準をどうしても読む気になれない方のために、極限までシンプルにした実践ダイエット法をご紹介します。
①まずは、自分が必要としている1日のエネルギー(カロリー)を計算します。
必要エネルギー(kcal/日)=基礎代謝×身体活動レベル(こちらで計算できます)です。
身体活動レベルはざっくりと、低い=デスクワーク、ふつう=それなりに歩き回る、高い=肉体労働、と考えてください。
なお、この式で計算される必要エネルギーはかなりおおざっぱな値なので、誤差がめっちゃあると思っててください。とりあえず目安がわかればよいのです。
②日々食べるものが大体必要エネルギーくらいになるように、カロリー計算します。必要エネルギーが大体の値なので、摂取カロリー計算も大体でOKです。細かくやりすぎるとめんどくさくなって続きませんので注意です。
③数週間続けて、体重が増えてくるようなら、必要エネルギーを高く見積もりすぎている可能性があるので、1割くらい減らします。逆に体重が減りすぎるようなら1割くらい増やします。
④理想的な体重になるまで、②~③を繰り返します。
⑤カロリー計算に慣れてきたら、並行して食べているものの「たんぱく質(P)」「脂質(F)」「炭水化物(C)」がそれぞれ何gくらいかも計算しましょう。これも大体で大丈夫です。
一日の目標摂取量は
・たんぱく質(P)→体重の1~2倍くらい。例)50kgなら50~100gです。
・脂質(F)→必要エネルギーの20~30%。例)必要エネルギーが2500kcal/日なら500~750kcal/日、グラムでいえば56~83g/日(脂質は1g=9kcalです)
・炭水化物(C)→てきとう。(エネルギー、タンパク質、脂質の量を決めれば勝手に決まる)
日々計算するのは結構面倒くさいけれど、大変なのは最初だけです。ある程度やっていると、なんとなくどの食材にどれくらいのカロリーやPFCが含まれるか分かってきます。きっちりかっちりやる必要はないので、大きく外さなければ良しと思ってください。
⑥余裕が出てきたら、「ビタミン」「ミネラル」のページも読み、これらの摂取にも気を配る。
⑦だんだん飽きてくるので、自分を楽しませる工夫をする。日記かくとか、体重をグラフにするとか、PFCバランスの優れた料理を追求するとか、職場でダイエットキャラを確立して後に引けない状態にするとか、Xやインスタでダイエットアカウント作るとか、です。実はここが一番重要かもしれません。
はいこれでダイエットは必ず成功します。
こどものダイエット
大人は口々に「そんなに甘いモノばっか食べたら太るよ」とか「ダイエット中だから食べないようにしてる」とか言います。そういう大人のふるまいを見ているとこどもたちにも何となく「太るのが悪、痩せるのが正義」とか「食べるのを我慢するのがダイエット」みたいな価値観が根付いてしまいます。
こどもは大人と違って成長のためにたくさんのエネルギーを必要としますので、盲目的に食べる量を減らすと「痩せる」ではなく「成長しない」につながるおそれがあります。これはとても危険なことです。
ダイエットの本質は、適切な5大栄養素を摂取することです。自分の食べているものに足りない栄養素は何で、多すぎる栄養素は何かを分析して、それを補うように食生活を整える、というのがダイエットであると、こどもたちにも伝えていきたいですね。
「ケーキを食べたら太る」ではなく「ケーキを食べたら脂質と糖質が多いので、夕食は脂質の低いささみのソテーと焼き野菜を中心に、お米は少なめにしておこう」と思えるようになれれば完璧です!