インフルエンザの点鼻生ワクチン「フルミスト」ってどう?
2024年度から、日本でもインフルエンザの点鼻生ワクチン「フルミスト」が認可され、使用できるようになりました。
注射しなくてもいいワクチン=痛くないワクチンとして、注目している方も多いのではないでしょうか。
わが子に毎年痛い思いをさせることがなくなると思うと、それだけでも少し気が楽になるかと思います。
今回はその点鼻生ワクチン「フルミスト」について解説したいと思います。
まずは当院の結論
・効果については、細かい違いはあるものの、おおむね注射と同じと考えてよい
・副反応は、点鼻だけあって鼻水、鼻づまりなどかぜのような症状が多い。
・注射よりも点鼻の方がつらくない! と思える子は積極的に選んでよいと思います。
・喘息のある人は避けた方がいいかも。
どんな感じで接種するか?
注射器のようなシリンジ(針はついてないよ!)を使って、両方の鼻の穴にシュッと1回ずつ噴射します。
自分にやったことがないのでわからないけれど、あまり刺激はないそうです。両鼻にやるので、片側やったら意外と痛くてもう片方ぜったいやりたくない!!ってならないことを祈りたいです。笑
接種はこの1回でおしまい。注射のように2日間予約を抑える必要はありません。
効果について
世界的には点鼻生ワクチンは約20年前から認可されている割と歴史あるワクチンです。初期のエビデンスでは、注射よりも効果が高いという報告が多く、そのため2014年時点では2~8歳に関してはこどもに対して注射よりも積極的に推奨されるワクチンという位置づけでした。
しかしこの点鼻生ワクチン、2009年に大流行した新型インフルエンザに対しては注射ワクチンよりも有効性が低いことが明らかになったのです。
これを受けて、米国では2015年には推奨が取り消され、2018年までのシーズン点鼻生ワクチンは推奨されないという状態が続きました。
しかし、カナダや英国ではこの期間も点鼻生ワクチンは継続されていて、2022年の英国からの報告では新型インフルエンザに対しても良好な効果があったそうです。米国においても、ワクチン製造に使用する株が見直され、新型インフルエンザに対する抗体が十分に上がることは確認され、今では米国での推奨も復活しています。
ただ、そもそもですが、注射ワクチンと点鼻ワクチンではワクチンのもととなる株の種類が違う(ワクチンでカバーできる範囲がややずれる)ため、注射と点鼻のどちらが優れた予防効果を発揮するかは実際に流行するインフルエンザの種類によって変わってきます。(インフルエンザはAとかBとかいうけど、AやBの中にもさらに細かい分類がある)
なので、現時点で一概にどちらが優れているか、ということははっきり言えないのです。
副反応、禁忌について
副反応については、添付文書的には鼻閉・鼻漏が約6割と高いです。点鼻だけに鼻関連の症状は多いんですね。これに発熱が加わった場合、インフルエンザのような症状になることがあります。この時検査を行うと、接種した生ワクチンに含まれるインフルエンザウイルスに反応して陽性となることがありますが、生ワクチンによってインフルエンザを発症したのか、副反応+接種したウイルスを検出しただけかは不明です。いずれにせよ、重症化することはなかったそうです。
それと、ぜいぜいするという副反応の報告があります。、米国疾病予防管理センターの2022年の推奨だと、5歳未満の喘息患者は接種不適当、5歳以上の喘息患者は接種注意とされています。日本の推奨だと2歳未満でぜいぜいが強くなるため適応から外されていますが、2歳以上では「重度の喘息を有する者又は喘鳴の症状を呈する者」で要注意と米国に比べややゆるいです。WHOの推奨はさらにゆるく、点鼻ワクチンは喘息の悪化とは関連なしといっています。
おそらく喘息持ちの子でも問題なく接種できるのでしょうが、少しリスクは上がるというイメージかなと思います。注射でもいけそうなら、注射を選ぶ方が無難かと思います。なお、喘息持ちの子はインフルエンザを発症した場合ハイリスクですので、予防接種自体はした方が良いです。
次に禁忌について説明します。
まず、生ワクチンなので妊婦さん、妊娠の可能性がある人は禁忌です。免疫不全のある方も禁忌です。
注射と違ってゼラチンを含むため、ゼラチンでアナフィラキシーを起こしたことのある方は要注意です。接種できなくはないけれど、わざわざ危ない橋を渡る必要はないと思います。
どっちを選ぶ?
さて皆さまはどちらを接種したいと思いましたか? 仮に大人の自分が接種するなら点鼻一択な感じもしますが、点鼻薬って意外に嫌いな子も多いです。もし嫌がって暴れた場合、腕を持たれて一瞬で注射されるのと、顔を押さえつけられて鼻に2回噴霧されるのではどちらがトラウマ的だろうと考えると、誰にとっても点鼻が良いとは言いきれないように思います。お子さんの性格に合わせて、よりストレスの少ない方を選択してあげたいところですね。
当院でも今年度からフルミストを採用しますが、認可された初年度ということで流通が安定していないため、準備できる数はかなり限られます。ご希望の方はお早めにご予約ください!
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