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赤ちゃんの黄疸~退院後の注意点も含めて~

[2023.11.17]

黄疸という言葉をご存じでしょうか。

 

「ビリルビン」という物質の血中濃度が上昇することで、皮膚にも溜まって黄色くなる症状のことを言います。
※みかんを食べると手が黄色くなるのは黄疸ではありません。

 

パパママにとっては基本的な知識かもしれませんが
生後数日の赤ちゃんはかならずこの「黄疸」になります。
中には光線療法という日焼けサロンみたいな青い光を当てて治療を受けた方もいると思います。
今回は、この「黄疸」にまつわるお話をしたいと思います。

 

黄疸の何がダメなのか

皮膚が黄色くなるだけなら、何ら問題はないのですが、このビリルビンという物質が脳にくっついてしまうと「核黄疸(ビリルビン脳症)」という病態を引き起こし、種々の神経症状や、ひどいと永続的な麻痺を残すことがあります。こわいです。

 

新生児が黄疸になる複雑な理由

ビリルビンという物質は、主に古くなった赤血球が破壊されたときに出てくる物質で、肝臓で処理され、うんちの中に排泄されていきます。

 

胎児期は基本的にうんちをしないので、自力でビリルビンの処理をするのは難しく、胎盤を通してお母さんにお願いしています。胎盤での物質のやり取りは血液を介して行われるので、胎児はお母さんに渡すためになるべくビリルビンを血液中にとどめておくようにします。このなごりで、生まれてすぐはビリルビンが血液中にたまりがちになります。

 

さらに、胎児期の赤血球は生まれた後の赤血球とは種類が違っていて、生まれてしまえば胎児期の赤血球はいらなくなるので、この赤血球はどんどん破壊されます。すると、たくさんのビリルビンが出てきます。

 

さらにさらに、日本人には肝臓でのビリルビン処理が苦手な遺伝子を持った人が多く(Gilbert症候群といいます)、人種的にも黄疸になりやすい傾向があります。

 

これらの理由から、赤ちゃんは黄色くなるのです。

 

ただの悪ではないビリルビンの微妙な立ち位置

実はビリルビンには抗酸化作用というはたらきがあり、出産時の低酸素や虚血などによるダメージを軽減してくれるという役目があります。赤ちゃんのビリルビンが上昇していることはビリルビン脳症のリスクであり、一方で赤ちゃんを守ってくれているのです。生命のメカニズムってほんとに複雑です。

 

こわい黄疸の見極め方

通常の正期産児であれば、出生後すぐの黄疸については通常日々検査し、必要があれば光線療法などの治療をします。一般的な良心的な産科施設で生まれていれば、自動的にチェックが入りますので、お任せしてしまって問題ありません。

 

退院後に注意が必要なのは、①便が白い場合(母子手帳のカラースケール1~3)、②生後2か月になっても黄色みが引かない場合、の2点です。

これらが見られた場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

 

母乳を飲んでいると体が黄色くなってくることがありますが、これは母乳性黄疸といって悪さはしませんので、心配いりません。

 


ビリルビン脳症の話をきいた上で、光線療法を受けるってなると、どうしても心配や不安が膨らんでしまいがちですが、黄疸治療は原則「疑わしきは治療」で危なくなる3手先くらいから介入していきますので、治療開始=危険ではありません。標準的な治療を受けている限り、よほどの重症でなければ後遺症を残すようなことはありませんので、安心してお任せください。

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