離乳食にまつわる言い伝え検証②魚は白身魚だけ?
離乳食シリーズ第二弾です。
僕が小児科医になりたての頃、かたくなに白身魚しかあげないお母さんに出会ったことがありました。自分自身もなんとなく離乳食って白身魚のイメージがあったので、そこまで違和感はなかったんだけど、その後、鉄欠乏をどう補っていくかを考えたときに、なんで赤身はダメなんじゃ? と疑問に思ったことから、ちゃんと勉強しないと、と思い至りました。
で、ある育児書によると、5〜6ヶ月から白身魚、7〜8ヶ月から赤身魚、9〜11ヶ月から青魚、を始めると良いとのことです。ちゃんと勉強もなにも、ちょっと育児書を見ただけで、別に離乳食は白身魚だけじゃないということがわかりました。笑
言い伝えについてはこれで解決ですが、このブログはこれから離乳食をあげるお母さんや、実はあまり離乳食に参加していないお父さん(耳が痛い、、)も見ているでしょうから、白身魚、赤身魚、青魚という分類について考えてみましょう。
赤身魚、白身魚、青魚とはなにか
日本水産学会の有名な文献「赤身の魚と白身の魚」によれば、赤身、白身の明確な定義はなく、「筋肉が赤色をしており血合筋の多いものを赤身魚と呼び筋肉が白色で血合筋の少ないものを白身魚と呼んでいる」という身もフタもない感じです。
筋肉が赤い、というのは、ゆっくり長く動き続けられる長距離ランナータイプの筋肉です。マグロとか回遊魚は長時間安定して動き続けるためにこのような筋肉になります。一方白い筋肉は瞬発力命の速筋、ボディビルタイプの筋肉です。アンコウなど、じっと待ち構えて獲物が来たら一瞬の素早さで捕食するような、ああいうやつが白身魚になります。
青魚は、水産庁のFacebookによれば、「背中から見て青い魚」「ただし高級魚を除く」という分類だそうです。高級魚とは? みたいな別の悩みが出てきてますが、少なくとも多くの青魚は、赤身魚に含まれるようです。
離乳食として与える場合の違いは?
赤身、白身の明確な境界線がない以上、白身は良いけど赤身はダメ、みたいな決め方は不可能です。ではなぜ離乳食は白身から始めて赤身、青魚、という順番になっているのでしょうか。
その理由は二つあって、「かたさ」と「脂質」がキーワードです。
一般に赤身魚は加熱するとかたくなり、白身魚はほぐれる傾向にあります。歯が生えていない赤ちゃんにあげるなら、柔らかいものの方が望ましいので、白身魚から、という話になります。
また、脂質の含有量はは白身<赤身<青魚と増えていきますので、赤ちゃんに脂質をあげすぎないように、と考えるとこの順番でステップアップするのが望ましい、ということになります。
これが、離乳食は白身魚→赤身魚→青魚の順番の根拠です。
栄養成分はどうか?
実際に代表的な魚の栄養成分を見てみましょう。
この時期の赤ちゃんが不足しがちな、鉄分、ビタミンDについても記載してみました。
表をみると、めかじき、さわら、銀ダラなどは白身魚でも意外と脂質が多いことがわかります。逆に、マグロやアジは赤身でも脂質低めです。脂質に関していえば、白身・赤身というよりは魚種によっていろいろなので注意が必要です。(ただ、赤ちゃんは脂質とっちゃだめというわけではないですので、制限しすぎると逆に栄養不足に陥るのでそれも注意です。)
また、白身魚は軒並み鉄分が少なめです。冒頭で例に挙げたお母さんのように、かたくなに白身魚に限定してしまうと、鉄不足になる恐れがあります。赤身魚、とくに血合筋は鉄分が豊富に含まれています。よく育児書に「鉄分といえばレバー」と書かれていますが、個人的にはレバーよりは赤身魚の方が食べやすいのではないかという気がします。
おかゆの時もそうでしたが、重要なのは「何カ月で何を食べる」みたいなマニュアルに固執することではなく、発達段階や栄養バランスを考えて臨機応変な対応をすることです。だからこそ悩ましいんですけどね。
もし個別のアドバイスが必要でしたら、どうぞお気軽に受診してくださいね。