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離乳食にまつわる言い伝え検証① まずは重湯、そして10倍がゆから?

[2023.07.14]

健診をしていて必ず質問されるのが、離乳食について。

 

それまでミルクと母乳の量だけでもさんざん悩んだっていうのに、食材の種類、形態、味付け、栄養バランス、、様々なことを考えなくてはならない。悩みが尽きなくて当然ですね。

健診でお話をしていても、我ながら「言うは易し」だよなあ、と思います。本当に、毎日頑張っているママ達には頭が下がります。

 

離乳食のことを勉強すると、いろんな疑問がわいてきます。何の疑問もなく当たり前にやっているけれど、よくよく考えると「え、これなんで?」っていうことがちょくちょくある。離乳食は古くから人間が生きるために自然と作られてきたものなので、当然臨床試験などを通して得られたエビデンスに基づいているものばかりではありません。だからなんの科学的根拠もなく信じ込まれ実践されていることがあっても不思議はないのだけれど、そうした謎の「言い伝え」に縛られて思い悩むママがいるのも事実です。

 

どこまで遵守すべきで、どこまで逸脱していいのか、離乳食にまつわる「言い伝え」を検証していく不定期シリーズです。

 

まず最初は「おかゆ」について。
僕は正直、おかゆをあまり食べたことがありません。幼少期風邪を引いている時に母が作ってくれた気がしますが、食欲がない中、味のしないおかゆはあまり美味しいという印象ではなかったからかもしれません。一人暮らしの学生時代も、自分でおかゆを作ったことは一度もありませんでした。

 

だからはじめは「10倍がゆ」と言われてもピンときませんでした。10倍ってなに? 界王拳? みたいな。

 

とはいえこの文章を読んでいるママは既にある程度勉強されていると思うので、ご存じとは思いますが、この機会におかゆにまつわる呼び名をまとめてみました。

ややこしいことに、おかゆには呼び方が2種類あって、炊く前の米と水の比率に注目した「〇倍がゆ」という呼び方と、炊いた後のかゆと重湯の比率に注目した「〇分がゆ」という呼び方があります。(重湯というのはおかゆを炊いた時の上澄み液のことです)

全がゆを10倍に薄めたものが10倍がゆではないんですね。

 

水の量が多ければ多いほど、ごはん部分は柔らかくなるので、赤ちゃんの発達具合(丸のみするのか、舌ですりつぶせるのか、歯茎で噛めるのか、歯でかめるのか)などによって硬さを調整していきます。

 

ここで注目すべきは、それぞれのおかゆの「エネルギー」です。実は「全がゆ」よりも薄くしてしまうと、同じ量のミルクよりもエネルギーが少なくなってしまいます。なので、重湯~全がゆまでのステップをあまり慎重にやりすぎると、ミルクだけ飲んでいた時よりも摂取エネルギーが少なくなり、体重が増えなくなる恐れがあります。

 

赤ちゃんの咀嚼・嚥下機能や消化機能を考えると、10倍がゆからはじめて徐々に水の割合を減らしていく、という方法自体は理にかなっていますが、体重が思うように増えないとか嫌がって食べないなどの問題がある場合は、思い切ってグッと全粥に近づけてみるというテコ入れも時に必要になるということです。

 

なお、思うように摂取量が増えず、体重が増えない子については、食事回数を増やしてトータルの摂取量を増やすという手もあります。1回食、2回食、3回食という言葉は、日本人の標準的な食事回数である3回に徐々に近づけていきましょうという指標であって、〇ヵ月だからとか初期だからとかで〇回食が決まるというルールは存在しません。1回にたくさん食べられない子に4回、5回食事を摂らせても何ら問題はないのです。

 

大切なのは、教科書通りの離乳食のすすめ方をこなしていくことではなく、①必要な栄養を確保し、②様々な食材に触れる機会を与え、③好ましい食文化を伝えていくこと、です。厚労省の「離乳の支援ガイド2019」をはじめ様々な育児情報で紹介される離乳食スケジュールはそれらをスムーズに達成するための目安であって、決して「この道から外れるとヤバい」という意味ではありません。

 

「まわりと同じ」にとらわれず、赤ちゃんにとって大切なことを見据えてフレキシブルな対応ができるとよいですね。

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