流行りのアデノウイルスに迫る
インフルエンザが猛威をふるう中、保育園などで増えて最近話題のアデノウイルス。
外来でも診る機会が増えましたが、さてこれは一体どんな病気でしょうか。
今回はこどもの感染症として重要なアデノウイルスに迫ります。
アデノウイルスの見た目は?
まず、アデノウイルスはこんなやつです。
みるからに悪そうな、FFのアーリマン的な、悪魔的なビジュですね。。。
ちなみにアデノウイルスは「アデノイド」というのどの奥の扁桃腺から発見されたことから命名されたそうです。
種類が多い!
アデノウイルスには60種以上の型があります。(ウイルスにはインフルのA/Bとかコロナのデルタ/オミクロンみたいに同じウイルス名でも複数の種類がある!)
それぞれの型で発症する症状が異なるので、病名も複数あります。アデノはそのためにややこしいんですね。
代表的な病名を挙げると
咽頭結膜熱(プール熱)
流行性角結膜炎(はやり目)
急性胃腸炎
出血性膀胱炎
などがあります。
この中で咽頭結膜熱(プール熱)の定点報告数が増えてきており、流行に入った、と判定されています。
それぞれの疾病を引き起こすウイルスの型はだいたい決まっており、例えばプール熱の子と接触して出血性膀胱炎になる、というようなことは通常ありません。
ただし、いずれの型も、ただの風邪や咽頭炎のような症状は起こすことがあります。(むしろその方が多い。)だからかぜの子と接触してプール熱を発症、はあり得るということになります。
抗ウイルス薬はありません
インフルエンザならタミフル、ヘルペスならアシクロビルのように抗ウイルス薬があるウイルスもいますが、アデノウイルスを直接やっつけるような薬は現時点ではありません。
なので、基本的には自然に治るのを待つしかありません。アデノウイルスの発熱は5日近く続くこともしばしばあり、本人はつらいし、なかなか解熱しないので親としては不安になります。
検査は?
さてそんなアデノウイルスですが、クリニックでの診断は抗原検査キットで行うことが多いです。なまじ検査キットがあるばかりに、保育園から「念のため検査してきて」と言われてしまう方も少なくありません。(アデノに関わらず、保育園からの「検査してもらってきて」「薬もらってきて」は大変困るので是非やめていただきたい。「診てもらってきて」で十分です。)
アデノは専用の治療法がないので、診断をつける意義はよく考える必要があります。痛い思いをして検査をしても、結果によってその後の治療方針が変わらないなら、その検査をやる意味はありません。
咽頭結膜熱(プール熱)、流行性角結膜炎(はやり目)については、学校保健法で出席停止の基準があります。なので本人のためというより感染隔離期間をはっきりさせるためというなら、意味があります。ただしプール熱とはやり目はどちらも目の症状が出ますので、目の症状があることが前提となります。
そこで当院で考える検査基準としては
①流行している時期に、強い目の充血(+高熱)がある場合
②低月齢、重症度が高い、5日以上発熱が続く、症状が非典型的などの場合に原因がアデノウイルス「ではない」ことを確認する目的
という感じです。実際には個別の経過や相談内容によって決めますので、この限りではありませんが。
感染対策はどうする
もしアデノウイルス感染症だと診断されてしまった場合はどうしましょう。
感染経路は飛沫感染&接触感染です。通常の風邪と同様ですね。
ただしアデノウイルスは「ノンエンベロープウイルス」といって、アルコールが効きません。そのため、家庭での感染対策はアルコールによる手指消毒ではなく、マスク、手洗い、部屋を分けるなどの物理的な対策を中心に、机など環境の消毒はハイターやミルトンで行いましょう。
感染者からのウイルス排出はプール熱の場合は5日間くらい、はやり目の場合は2週間くらい続きますので、その間はしっかり感染対策しましょう。
登園基準は?
学校保健法に規定されている登園再開の基準は、咽頭結膜熱(プール熱)の場合、発熱などの症状が消失したあと2日休んでから登園、流行性角結膜炎(はやり目)は医師が感染の恐れがないと判断してから登園です。
発熱とのどが赤いだけの咽頭炎や扁桃炎であれば、解熱して元気になればOKです(普通の風邪とおなじ)
コロナが5類になって感染対策が緩んだからか、5月以降いろいろな感染症がかわるがわる流行しています。そろそろ百日咳、りんご病あたりがくるのかな?
皆さま、コロナ禍でせっかく覚えた感染対策を是非とも活かして、次々襲い掛かる感染症から身を守りましょう。