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子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)は接種すべきか?(R5.4.11改訂)

[2023.03.31]

子宮頸がんワクチンの「積極的勧奨」が再開し、4月から新たに9価ワクチンのシルガードが定期接種として使用可能になりました。

 

子宮頸がんワクチンと言えば、接種後に壮絶な副反応が出るぞと言われ、2013年度から9年近くもの間「積極的勧奨の差し控え」という状態が続いていました。当時僕は研修医で、動画サイトなどにアップされたけいれんなどの動画を見て、「なんて恐ろしいワクチンなんだ」と戦慄したものでした。

 

しかしながら、何年もの時を経て、子宮頸がんワクチンの安全性と有効性がじっくり検討され、有益性が有害性を上回ると結論づけられたため、2021年に「積極的勧奨の差し控えの終了」が発表されました。

 

日本では、子宮頸がんワクチンは危ない、と主張する勢力が強すぎて、いまだにネット、書籍、学会誌などにも登場します。僕は普段予防接種外来では、次に接種すべきワクチンのご案内をしますが、子宮頸がんワクチンというと、表情をくもらせる親御さんもまだまだ多いです。

 

なぜここまで反対勢力が巨大化し広まったかについては、科学だとか人の心だとかの根幹にまで話が広がるので、この場では割愛します。
ここでは、現在評価されている子宮頸がんワクチンのメリット・デメリットについて書いてみたいと思います。

 

子宮頸がんワクチンのメリット

メリットは当然、子宮頸がんの抑制なのですが、どのくらい効果があるかというと、スウェーデン、デンマーク、イングランドなどの報告によれば、浸潤子宮頸がんを8割以上減少させる効果があったと言います。ほかにアメリカ、オーストラリア、イギリスなどでも4~8割以上の効果が示されています。日本からは、前がん病変の中等度異形成を76%減少させたという報告があります。また、2020年に「積極的勧奨の差し控え」で接種率が激減した世代の子宮頸がん健診がはじめて行われましたが、細胞診の異常発生率が5%と、それまでの接種世代で3~4%だったものが明らかに増加しています。

 

また、子宮頸がんの原因となるHPVというウイルスは中咽頭がん(のどのがん)や肛門がんの原因としても知られており、子宮頸がんワクチンはこれらの発症予防にも効果が期待されており、多くの欧米先進国では男の子への定期接種もすすめられています。(日本では今のところ、男の子には自費での4価ワクチン(ガーダシル)のみ適応があります。)

 

効果は絶大です。

 

子宮頸がんワクチンのデメリット

冒頭の衝撃的な動画の話に代表される、「子宮頸がんワクチン危ない」の根拠となっているのが、ヒトパピローマウイルス関連免疫異常症候群(HANS)という病態です。HANSはどんなメカニズムで、どんな症状があって、どんな治療法があるか、などを論じた文献は数多くありますが、肝心の子宮頸がんワクチンとHANS発症の因果関係を直接的に示すエビデンスは見当たりません。むしろ、WHOをはじめ先進諸国からはこのような副反応との因果関係を否定する報告はたくさんあり、日本からも有名な名古屋のデータが「HANSのような症状は子宮頸がんワクチンを接種してない人にも同じくらい存在している」ことを示しています。
現状では「HANS的な症状に苦しんでいる人がいるのは確かだが、そのことと子宮頸がんワンクチン接種とは特に関係ない」と考えるのが妥当です。

 

他に、発熱などの全身症状や接種部位の腫れなどの副反応はありますが、他のワクチンと比べて特別高いというわけではなさそうです。

 

ちなみに、明らかなデメリットとして「痛い」ということがあります。子宮頸がんワクチンは接種したとき「痛い」ワクチンなので、ある意味覚悟が必要です。その意味では、4月から2回接種でよい9価ワクチンはありがたい存在といえるでしょう。

それから打った直後に「失神」するのも他のワクチンと比べて多いようです。そのため、背もたれのある椅子に座ってまたはベッド寝た状態で接種し、接種後もしばらくは院内で休憩していただくことになっています。

 

まとめ

世間ではいろいろな意見が飛び交う子宮頸がんワクチンですが、上記のメリットデメリットを天秤にかけると、個人的には予防接種の中でも1、2を争うくらい重要なワクチンだと思います。自分の娘にはまず接種させると思います。

これまで、様々な風評になんとなく心配だった方も、是非この機会に接種を検討してはいかがでしょうか。

 

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