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RSウイルス細気管支炎ってどんな病気?

[2024.04.12]

最近、人知れず、緊張しています。

 

今年は、昨年よりさらに早くRSウイルスの報告数が上がり始めているからです。

もともと冬の感染症だったRSウイルス、コロナ禍以前から徐々に冬→秋→夏と流行のピークが移動していました。コロナ禍で一瞬姿を消したかと思いきや、一気に春先~初夏の感染症として帰ってきました。このまま一周して冬に戻る気なんじゃなかろうか、と思うくらい。

 

世に重症疾患は数あれど、一般的な小児科クリニックで診る疾患の頻度を考慮すると、RSウイルス流行時が最も重症度が上がる時期なんじゃないでしょうか。

 

インフルも、コロナも、アデノも溶連菌も、診断して、「具合悪くなるようならまた来てね」と言っても、実際に再診することはほとんどありません。が、RSウイルスの場合は「明日も絶対来てね!!」って言わなきゃいけない子が多いです。二次病院の病床が埋まると、結構苦しそうな子でも外来で診ることを余儀なくされるので、こっちも心配で夜眠れなくなります。

 

そんなRSウイルスの流行が4月の入園シーズンと重なると、まだ風邪もひいたことがないような幼子たちに一気に広まる可能性があります。本当に恐怖です。

 

RSウイルスってなに?

さてそもそもRSウイルスの名前を聞いたことがない方も多いかと思います。RSウイルスは一言でいえば「かぜ」の原因ウイルスのひとつです。

 

RSウイルスの特徴は、大人や年長児ではただのかぜで済むけれど、乳幼児が感染すると重篤な細気管支炎を起こすことです。熱は無いか、2-3日くらいで済むことが多いけど、鼻水と痰があふれ、ぜこぜこ苦しそうにします。

 

RSウイルスには「ウイルスを直接たたく治療法がなく」「発症してから5日くらいかけてだんだん悪くなる」という特徴もあります。喘息みたいにぜいぜい言うのに気管支拡張薬が効きません。ウイルスなので当然抗菌薬も効きません。まさに、真綿で首を絞められるような、徐々に悪くなっていく様子を祈りながら見守るしかない、嫌~な感染症です。

 

検査について

インフルみたいに鼻につっこむ抗原検査があります。ただし、外来での保険適応は0歳児のみです。なんせ治療方針は変わらないし、隔離方法も変わらないので、軽症な子や大きい子の検査をする意義はあまりありません。保育園から「検査してきて」と言われて受診された方は、板挟みにして申し訳ありませんが、検査はお断りしています。

 

感染対策が重要

RSウイルスは飛沫感染するウイルスで、かつアルコールが効くタイプなので、感染対策はマスク、換気、手洗い、手指消毒など、コロナやインフルと同じでOKです。

 

問題は、年長児や大人では軽いかぜで済んでしまう、という点です。RSウイルスが本格的に流行している時は、3歳以上のこどもや保護者は軽い咳や鼻の症状であっても赤ちゃんとの接触は避けるべきです。前回の記事でも書きましたが、保育園への登園基準も少しハードルを上げて考えるべきです。

 

予防

現在日本ではハイリスクな赤ちゃんのみ「シナジス」という予防接種みたいなやつ(厳密には違うけど)を使うことができます。昨年度適応疾患が追加されましたが、ローリスクと言われる子でもけっこう重症化することはあるので、本来全赤ちゃんに予防をしたいところです。

 

ちなみに自費でやろうとすると1回10万円くらいかかります。しかもシナジスは毎月注射しなくてはいけないので、さすがに無理です。また、保険適応になったとしても、毎月打たれる赤ちゃんもクリニックに通う親御さんもけっこう大変です。

 

世界的には、妊娠中のお母さんへの予防接種「アブリスボ」か、生まれてから赤ちゃんへのたった一回の抗体投与「ベイフォータス」かのいずれか一方で、毎月のシナジスに匹敵する効果があるとして推奨されています。どちらも今年に入って日本でも承認が下りているので、そのうち臨床でも使えるようになると思います。

 

 

なんとなく、RSウイルスの概要がイメージできたでしょうか。

RSウイルス流行時期は「ちょっと咳と鼻がでるんですよねー」くらいの主訴で受診された子が、聴診してびっくり重症じゃん! ということがしばしばありますので、受診の基準も少し早めにしてもいいかもしれません。

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