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大和市の病児保育事情

[2024.05.10]

先日、大和市内でたった3つの病児保育施設のうちの1つ十六山病児保育室Bambiniの方が来院され、今年9月一杯で施設を閉鎖することを教えてくれました。

 

理由はシンプルに採算が取れず経営が破綻したため。驚くべきことに、年間数千万円もの赤字で、それを事業主が自己負担していたそうです。すごいです。

 

1日2000円という価格で病児を預けられるのは、そうした粉骨砕身の献身あってこそだったんですね。

 

病児保育を維持するには

病児保育はコストがかかる事業なので、維持するためには①行政からの補助額を増やす、②利用者が負担する価格を増やす、のいずれかまたは両方が必要になります。

 

しかし

 

①行政からの補助に関しては、Bambiniのお知らせに記載されているように、期待はできないそうです。

②利用者の負担を増額すると、大和市の平均所得からするととても利用できなくなってしまうそうです。

 

というわけで、大和市の病児保育事業はなかなかに、八方ふさがりの状態のようです。

 

病児保育破綻によるしわ寄せ

病児保育が利用できなくなれば、祖父母などに頼れない保護者は仕事を休む必要がでてきますが、保育園の洗礼の記事で書いた通り、はじめのうちはこどもはほとんどずっと風邪を引いているような状態です。なかなかそこまで自由に何度も休めるホワイトな職場は少ないでしょうし、パートの場合は休みが増えれば給与が減り生活が困窮します。

 

仕事が休めない、親戚にも頼れない、病児保育もない、となると、ある程度の症状があっても通常の保育園に登園させざるを得なくなります、すると当然感染症は蔓延し、患者が増えます。患者が増えれば重症患者数も増えます。保育園は年齢層が広いことも多く、RSウイルスのように、年長児ではただの鼻かぜでも赤ちゃんで重症化する病気もあります。医療機関はひっ迫し、大和市立病院などの二次病院も医師の働き方改革でマンパワーが不足しているため、適切な医療を受けられない重症児が出てくるリスクが増大します。

 

こうして最終的に、不利益をこうむるのはこども、ということになります。

 

(仮にこういう状況で「病児は親がみるべきだ」なんて言っちゃう政治家がいるのなら、その人の職場はよほど理解があって、本人も育児に熱心で、こどもに何かあればどんな重要な会議があろうが選挙活動中であろうが、いつでも自由に休みをとれて、それでも生活に困らない収入が保障されていたんでしょうね。それが当たり前のこととしてできている人からすれば、確かに病児保育は不要かもしれません。しかし現実はそこまで甘くありません)

 

費用面をみても、行政が病児保育事業への補助額を削ったとしても、めぐりめぐって医療費が増大するわけなので、その辺てんびんにかけると、どうなんでしょうね。政治に関して私は素人なので、知った口はきけませんが、「~すべき」という観念論で無理を押し通して最終的にこどもにしわ寄せがきてしまうような政策は、ちょっと考え直してほしいなと思うばかりです。

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