メニュー

コロナ5類移行後、マスクはつける? はずす?

[2023.05.12]

5月8日からコロナが5類感染症に移行されました。これを受けて、世の中ではさまざまな活動が再開されてきました。

 

街でも、マスクをつけていない人の姿が増え、受診する患者さんの親でもマスクなしの人をときどきみかけます。

やったーマスク外せるわー!と思う人、長いコロナ禍ですっかりマスクに慣れてしまってむしろマスクなしでは落ち着かない人、いろんな人がいるかと思います。

 

令和5年3月13日以降、厚労省の方針ではマスク着用は「個人の主体的な選択を尊重し、着用は個人の判断が基本となります」となっていますので、いろいろな考えを持った人がそれぞれ選択すればいいのかなと思います。

 

が、よくよく考えてみれば、「個人の判断」って言われても、何を根拠に判断したらよいのでしょうか? 医療者ならともかく、感染制御の知識がないとそれってけっこう難しくない?

 

結局「まわりの目が気になるからはずしにくい」「マスクしていると苦しいから義務じゃないなら外したい」「なんとなく心配で、、、」みたいな非科学的な根拠によりふわっと選択することになりがちじゃありませんか?

 

「個人の主体的な選択」なのでそれでもいいとは思いますが、せっかくなので、何を目的として、何を期待してマスクするんだっけ? ということを考えて選択できるよう、解説したいと思います。

 

まず、勘違いされがちですが、「5類になったから、感染するリスクは下がった」は間違いです。むしろ5類になったことで、いろいろな活動が再開され感染防御も甘くなるため、コロナに感染するリスクはむしろ以前より上がります。この前提で考えなければいけません。

 

マスクに限らず感染対策の目的は個人レベルでは「自分がコロナに感染しないこと。まわりにコロナをうつさないこと。」の2点です。

何をいまさら、ですが、この目的を達成するという意味では、マスクの効果をあり/なしの二択で決定することはできません。

 

人から人へうつるためには、①既に感染した人がウイルスを放出して、②それを別の人が受け取って、③体内にウイルスが定着する、という三つの行程が必要です。

感染対策はそれぞれの行程で行われ、その合算が予防効果として現れます。

 

①既に感染している人からのウイルス放出

コロナで何が問題かというと、無症状の人でもウイルスを排泄するということです。

 

たとえばインフルエンザの場合、体外にウイルスが排泄されるのは主に高熱や倦怠感が強いときなので、通常その期間は家で寝込んでいて人との接触は限られます。

しかしコロナの場合は、(自分自身も含め)その辺にいる元気な人が実は感染していて、ウイルスを出しているという可能性があるので、いつどこでもらうか/うつすか分からない!という恐怖があるのです。濃厚接触者の外出制限があったのはこのためです。

 

だからこそ、流行状況が重要になります。流行しているときは知らずに感染している人の数も多くなり、ウイルスへのエンカウント率があがります。そういう場合はこちらも防御力をあげておく必要があります。

また自分も知らずに感染している可能性があるため、まわりにまき散らさないようにガードしておく必要があります。

そういう場合はマスクの効果が期待されます。

 

反対に、全然流行っていないようなときにはウイルスと出会う確率が相対的に低くなるので、そこまでナーバスになる必要はないかもしれません。(ただし5類になったことで全数報告が定点報告になり、メディアも以前ほどは騒がないでしょうから、流行状況は分かりにくくなると思われます)

 

②放出されたウイルスを別の人が受け取る

コロナウイルスの感染経路は主に飛沫感染、エアロゾル感染。要はせき、くしゃみ、しゃべったときにとびちるつばなどを吸い込むことで感染します。なので人のせき、くしゃみ、つばが空気中に漂っているところで息を吸わなければ感染しません。

 

身もふたもない最強の予防法は「家から出ない」です。

続いて「三密を避ける」、そして「マスク」です。

 

解放された屋外やソーシャルディスタンスがしっかりとれている場所なら、そもそも自分の吸う空気中にウイルスがいる確率が高くはないからマスクがあってもなくてもそんなに変わらないだろう、と考えられます。

 

逆に密を避けられない状況では、ウイルスを吸い込む可能性を減らすためマスクでガードする必要がある、ということになります。

 

マスクがウイルスをキャッチして体内に入るのを防いでくれる度合いは、マスクの材質、そしてきちんとフィットできているかによって変わってきます。当然、鼻出しマスクやマスク表面を素手で触って顎マスクにしたりという使い方では防御力がガクンと落ちます。

 

③体内でウイルスが定着する

ウイルスが体内に侵入しても、すかさず免疫がやっつけてくれれば感染しません。

 

そのために重要なのが「基本的な生活習慣改善」と「予防接種」です。寝不足、運動不足、暴飲暴食、心身のストレス、などは自らの免疫力を落とし健康を害する行為なので、全身全霊をもって改善策を講じるべきです。

パパママの仕事においてはコロナ禍で縮小・効率化できた業務をわざわざ元に戻すようなことはやめましょう。「働き方改革」は予防医療であるといっても過言ではありません。

 

また、予防接種の効果は示されており、免疫力アップに一定の効果が期待できます。(ワクチンの詳細はここでは割愛します)

 

④発症し、重症化する

ちなみに、感染防御の目的「自分が感染しない、人にうつさない」のさらに上位に位置する目的が「病気で苦しまない、死なない」です

 

オミクロンになり重症度が落ちたことで、特に小児では、「かかってもたいていは風邪程度で済むし、そもそもそこまで頑張って予防する必要なくない?」という価値観が生まれています。感染したって、人にうつしたって、別にいいや、という考えからマスクを外す、というのもありかと思います。

もちろんこれはマスクをすることで生じる感染対策とは別の様々なデメリット(友達の素顔を知らない、素顔をみられるのが怖い/恥ずかしいと思ってしまう、息苦しさを感じる、体育や音楽に支障がでる、ちゃんとマスクをできない子供を怒らなきゃいけない、など)とてんびんにかけた末の決断として、です。

 

ただし、一定の確率で重症化する人や後遺症に悩まされる人がいる以上、感染者をいたずらに増やすことは重症者・後遺症患者の数をも増やすことにつながるので、完全なるノーガード戦法は社会にとってはマイナスになる可能性があることは念頭におくべきです。

 

 

以上のように、マスク着用は一連の感染対策の中の一つのピースとして位置づけられます。

 

マスクをつけるべきか否かは、感染対策の他の部分がどれくらい達成されているかによって相対的に判断していく必要があるかと思います。「マスク派」「反マスク派」などとあたかも主義思想のように二極化して批判し合うようなものではありません。

 

ちなみに、冒頭で受診する患者さんの親でマスクを外す人もときどきいる、と書きましたが、これはあまりおすすめしません。

感染対策をしているとはいえ、クリニックには具合の悪い人が集まるため、①でいうウイルスへのエンカウント率は跳ね上がります。

自分を守るために、ぜひマスクの着用をおすすめします。

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME