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拡大新生児マススクリーニング

[2022.06.05]

6月2日のNHKニュースで、拡大新生児マススクリーニングで脊髄性筋萎縮症の早期発見、早期治療が実現したことが報道されました。国内初だそうです。

新生児マススクリーニングって?

皆さんも出産した病院で赤ちゃんの血液検査の説明を受けて、1か月健診でその結果を母子手帳に貼り付けながら説明された記憶があると思います。
聞いたこともない病名が並んでいて、なんだかよくわからないけど、問題ないならいいか、となるやつです。


こういうやつ

 

なぜ全員にそんな聞いたこともないような病気の検査をするのか、というと、それらが「早期治療が有効」だけど「頻度が少なく」「身体所見からはみつかりにくく見逃されがち」だからです。

こういう疾患をもって生まれた子をなんとか救いたい、という思いから生まれたのが、マススクリーニングです。

 

マススクリーニングに込められた熱い思い

時はさかのぼり、1957年、アメリカにロバート・ガスリーという微生物学者がいました。ガスリーは知的障害を持つ子どもの地域活動に参加し、そこで「フェニルケトン尿症」という難病の存在を知ります。「フェニルケトン尿症」は、有効な治療法がある一方で、確立した検査法がなく、診断・治療開始が遅れてしまうという問題のある病気でした。
ガスリー博士はさっそく自分の専門分野である微生物学を活かして、測定方法の研究を始めました。

そんな矢先、ガスリー博士の生後1歳3ヶ月になる姪っ子が、「フェニルケトン尿症」と診断されました。ガスリー博士は自らの研究が身内の役に立てなかったことを大変悔やみました。その悔しさをばねに、ガスリー博士はさらに研究に情熱を注ぎます。
その後、ガスリー博士の並々ならぬ努力により、たった4年でフェニルケトン尿症の検査方法が実用化され、一部の州でこれがスクリーニング検査として採用されるに至ります。

それから半世紀、、、

医療の進歩により、今では20を超える疾患を検査することができるようになりました。いずれも「早期治療が望ましい」けれど「見つけにくい疾患」をもって生まれた子を助けたいという思いがガスリー博士から連綿と受け継がれてきた結果と思います。

さらに進化するマススクリーニング

研究は今も続いており、最近では新たに「重症複合免疫不全症」と「脊髄性筋萎縮症」のスクリーニングの実用化に向けての取り組みが進んでいます。
神奈川県では2022年4月から、「拡大新生児マススクリーニング」として、有料ではありますが上記2疾患のスクリーニングが開始されており、愛育病院でも参加しております。
冒頭のニュースは、このうち「脊髄性筋萎縮症」がスクリーニングで発見され、早期治療が実現した国内初の症例ということでした。

僕は、どんな疾患をもって生まれてきた子でも幸せになることができる、と信じています。そしてだからこそ、予防したり早期に治療したりすることで少しでも痛みや苦しみを取り除いてあげられるのは、素晴らしいことだと思います。

新しいマススクリーニングが行政のサポートのもと、すべての赤ちゃんの適用されるようになると良いですね。

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