子宮頸がんワクチンは4価の「ガーダシル」と9価の「シルガード」どっちがいいの?
最近クリニックへの問い合わせが多いので、記事にしてみたいと思います。
そもそも子宮頸がんワクチンて受けたほうがいいのー?って方はこちらの記事をご参照ください。
「4価」とか「9価」ってなに
ご存じの方も多いでしょうが、「〇〇価」というのはウイルスの「型」をいくつカバーしているか、という数字です。同じ名前のウイルスでもいろんな型があって、それぞれ異なる症状や性質があり、免疫機構もそれぞれ微妙に異なっていることがあります。(コロナウイルスの「従来型」とか「オミクロン」とかみたいな感じですね)
子宮頸がんの原因になるHPV(ヒトパピローマウイルス)には200以上の型がありますが、そのうち、子宮頸がんに関与するハイリスクなのがHPV16、18、31、35、39、45、51、52、56、58、59、68、73、82の15種類と言われています。
4価のガーダシルはHPV6、11、16、18の4種類に効果があります。9価のシルガードはHPV6、11、16、18、31、33、45、52、58の9種類に効果があります。(型の数字を覚える必要はありません)
なので、理論的にはたくさんカバーできるシルガードの方がいいよね。って話になります。
有効性の比較
接種した時の抗体価(免疫の能力)の上がり具合はどうか、というと、
海外の臨床試験では、ガーダシル、シルガードどちらもがカバーしているHPV型(6、11、16、18)に対する抗体価の上がり方は、どちらのワクチンでも同等というデータがあります。
また、シルガードのみがカバーしているHPV型(31、33、45、52、58)に関しては当然ながらシルガードの方が抗体価が上昇しており、それらの型に関連するがん発症率も圧倒的に低く抑えられています。
日本国内の研究でも被験者数は少ないものの、同様の結果が出ており、やはりシルガードの方が有効性の面では有利なようです。
理論上効きそうなシルガードは実際にも効果がありそうです。
副作用の比較
結論から言うと、両者で大きな差はありません。発熱と消化器症状がちょっとだけシルガードで多いくらい。「痛い」のと「失神」がほかのワクチンより多いのは、ガーダシルもシルガードも同様のようです。世間で言われるような複合性局所疼痛症候群やら体位性頻脈症候群やらHANSやらの混み入った副反応との因果関係は示されていません。
接種回数の比較
令和5年4月現在の決め事によれば、ガーダシルは3回接種、シルガードは15歳未満なら2回接種で15歳以上は3回接種、とされています。なぜシルガードは15歳未満なら2回接種でいいかというと、15歳未満の2回接種と15歳以上の3回接種で抗体価の上昇を比較すると同じくらいだった、というデータが根拠のようです。
「痛い」ワクチンなので、接種回数は少ないにこしたことはありません。
というわけで、現状では、ガーダシルかシルガードか、という質問には、シルガードの方がいいと思いますよー、と答えるようにしています。
ちなみに、途中までガーダシルを打った人は、原則そのままガーダシルで3回接種することが推奨されていますが、希望があれば途中からシルガードに切り替えることもできるようです。ただこのパターンに関してはデータが十分ではないため、一概にどちらがいいかとは言いにくい状況です。
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