赤ちゃんのおちんちんの皮はむくべきか
注:内容はいたってまじめです。
今回は健診での相談が意外に多い、男の子のおちんちんの取り扱いについてです。
女性であるママはもちろん、パパだって自分以外のおちんちんをまじまじと眺める機会は少ないわけで、どうやってケアしていけばよいか困惑してしまうのも当然の話です。
まず、結論から言うと、
むく必要はありません。
切る必要もありません。
やさしく丁寧に洗いましょう。
の3点が要点となります。
おちんちんの皮の自然経過
まず基礎知識として、ちんちんの皮の被り方は
・常時むけている状態
・通常は皮を被っているが手で簡単にむける状態(仮性包茎)
・むこうとしてもむけない状態(真性包茎)
の三段階があります。
赤ちゃんの多くは真性包茎の状態で、そのうち9割は思春期に自然と仮性包茎または常時むけている状態になると言われています。最終的には日本人の成人男性の6-7割は仮性包茎の状態で落ち着きます。一般には仮性包茎と真性包茎をひっくるめて「包茎」と言いますので、実は包茎の方がマジョリティーなんですね。
包茎であることは自然なことですので、特に手を加える必要はない、というわけです。
じいちゃんばあちゃん世代の困った価値観
そもそも包茎に対してなにかした方がいいですか? という疑問や不安はなぜでてくるのでしょうか。
なんとなく「包茎」であることを恥ずかしいと思っている方や、コンプレックスになっている男性や、そのような認識の女性はいると思います。これ、1980年代頃に「包茎は不潔である」「包茎は女性に嫌われる」「包茎はカッコ悪い」というフレーズが流行したことに端を発するという説があります。ちょうど我々の親世代がブイブイ言わせているバブリーな時代ですね。
その名残で、なんとなく男の子だから皮はむいてあげないと、みたいなプレッシャーが生まれている可能性があります。しかしそんなプレッシャーを感じる必要は一切ありません。おかしいのはその価値観の方です!!
だって、これを読んでいるママの中に「もしパパが包茎だったら結婚してなかったわ~」とか「パパのちんちんは皮をかぶっていなくて本当にかっこいいわ~」とか思ってる人いますか?! 心の底からどうでもいいです。チンコの皮がむけているより、人として一皮むける事の方が大切です。
ときどき「包茎のまま大きくなったら、いじめられるかもしれない」という不安を相談されることもあります。
確かに中学生くらいの頃は、「包茎~」とか言っていじめてくる奴は存在しますが、そういうやつは「ずるむけー」でもいじめるし、ちんちんがでかくても小さくても、毛が生えてても生えてなくても、馬鹿にしてきますからね。なので、いじめ、からかいに対する防御という意味では、皮をむいてあげることよりも、そう言った謎の価値観に流されないような芯のある子に育てることが優先されます。
それでもどうにかしたい場合
そうはいっても、すでに世の中に定着した価値観を個人の力でいきなり変えることはできません。いくら医学的に問題ないといわれても、誰にも言えずに悩んでいる子も多いと思います。
専門的なアドバイスが欲しい場合は、当院で相談していただければしかるべき医療機関にご紹介させていただきます。どうぞお気軽にご相談ください。
家ではどのようなケアをすればよいか
思春期以降で真性包茎→仮性包茎にするためには、抵抗を感じるところまで優しくむく、ということを毎日繰り返すと次第に緩んでくるそうです(俗にいうムキムキ体操です)。このとき無理やり全開までむくのは危険です。元に戻らなくなる「嵌頓包茎」になると最悪緊急手術が必要になるし、包皮が傷ついてしまうと治る過程でさらに固くなってしまうリスクがあるからです。
ムキムキ体操は思春期以前の子にはおすすめされません。成長とともに自然に緩くなってくることがほとんどなので、嵌頓などのリスクを負ってまでする必要はないからです。
どうしても仮性/真性包茎→常時剥けている状態にしたければ、医療機関で皮を切るほかありません。海外では「割礼」という文化がありますが、あくまで文化であり、医療的なメリットがあってのことではありません。(ただしムキムキ体操で改善しないような難治性の真性包茎の場合、医学的な適応になる可能性はあります)
洗い方の注意点
「包茎は不潔である」というわけではありませんが、汚れが溜まりやすいのは事実です。なので、きちんと洗ってあげることが重要です。仮性包茎の場合は、毎日お風呂で亀頭をしっかり露出させて根元まで洗いましょう。
真性包茎(多くの赤ちゃんがこれ)の場合は、抵抗なくむけるところまで優しくむいて泡とシャワーでよく洗いましょう。
汚れが溜まって炎症を起こすと、包皮が赤くなったり、膿が出てくることがあります。包皮炎とか亀頭包皮炎とか言います。基本的には上記の洗い方でよく洗うことで改善しますが、治らない場合や強い痛みを伴う場合は受診しましょう。
いかがでしょうか。おちんちんのことって、身近ながらなんとなく正解がわからないし人に聞きづらい内容かと思いますので、少しでも参考になれば幸いです。
なお、今回の記事の中の多くの情報は、Youtubeの性教育の相談でも紹介した、「射精道」を参照しています。パパママや思春期のこども本人が性教育の基礎的な内容を学ぶ本として非常に秀逸ですので、是非一度読んでみてください。
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