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胃腸炎の子の家庭でのケア

[2024.02.02]

年が明けて、コロナ、インフル、溶連菌、そして急性胃腸炎が激増しております。

 

嘔吐や下痢を主訴に受診される方がとても多いです。今回は、基本的な内容ではありますが、重要な、嘔吐下痢が続いている子のケアについてお話したいと思います。

 

急性胃腸炎の典型的な経過

いわゆるウイルス性急性胃腸炎(ノロとかロタとか)の典型的な経過は、まず突然の嘔吐で始まります。吐くとすっきりして飲み物を欲しがりますが、ちょっと飲ませるとまたすぐに吐いてしまう、という状態がしばらく続きます。大体嘔吐は1~2日以内でおさまることが多いです。腹痛や発熱を伴うこともあります。嘔吐に続いて下痢が始まり、下痢は3~7日くらい続きます。食欲は低下していることが多く、症状改善とともにゆっくりと回復していきます。

人により、嘔吐だけだったり、下痢が先に来たりバリエーションがあります。元気になった後も下痢が2週間以上!続くケースもあります。

 

家庭でのケア

例によって自然に治癒する胃腸炎なので、薬で治すことはできません。待っていれば治るのですが、治癒までの間、脱水や低血糖にしないような水分・栄養管理が家庭でのケアの重要なポイントになります。

 

何を飲ませるべきか?

脱水が疑われる場合の初期の水分は、もちろんOS-1やアクアライトなどの経口補水液が推奨されるわけですが、その主旨は水分とともに適度な糖分とナトリウムやカリウムなどのミネラルを補充することにあります。よって、OS-1やアクアライトがおいしくなくて飲めないような場合は、代わりの飲料として、しょっぱい系の水分(味噌汁の上澄み、野菜スープの上澄み、塩気のある重湯やおかゆ、チキンスープなど)が望ましいです。

 

反対に、甘い系の水分(果物ジュース、炭酸飲料など)は推奨されません。ナトリウムの補充ができないだけでなく、甘みが強い(糖分が多すぎる)飲み物は浸透圧が高く、下痢を助長するおそれがあるためです。ポカリなどのスポーツ飲料はミネラルはあるけど糖分も多く、微妙なところです。果物ジュースをあげるなら倍以上に薄めて、少し塩を振るとよいです。(おいしくないけど)

 

一方で、2016年に出た有名な論文で、軽症胃腸炎に薄めたリンゴジュースを飲ませたところ、経口補水液より良好な結果だったというものがあります。果物ジュースはだめ、という推奨と矛盾するようにみえますが、要は重症でなければ、そこまで飲ませるものにこだわらなくてもよいということなのかもしれません。

 

下痢がひどくなければ、果物ジュースやゼリー飲料なんかでも何も飲まないよりはずっとましです。

 

どのように飲ませる?

WHOの推奨では、

 

初期は体重あたり75mLの量を4時間かけて与えましょう。与え方は、1~2分おきにティースプーンなどで

 

とあります。

これを翻訳すると、、、

 

10kgくらいの子なら、だいたい小さじ1杯(5mL)を90秒ごとに4時間あげ続けるとちょうどよい量になります、です。

 

鬼か!!

 

いくらこどもの具合が悪いとはいえ、家事や兄弟の世話もあるし、さすがにここまで細かくやるのは無理でしょう。しかし、各国のガイドライン、大体こんな感じの記載です。つまりこれくらいきっちりやれば、結構重症な子でも家庭でみられますよ、という理解でよいかと思います。あとは、ご家庭の状況や本人の具合をみつつ、この指標から大きく外れないように気を付けつつ臨機応変にやればよいかと思います。

 

ただし欲しいだけがぶ飲みさせるとまず吐きます。少しずつ小分けにしてあげましょう。
なお、10歳以上の年長児であれば、本人のペースにまかせて飲んでも大体問題はないようです。

 

吐いている子に飲ませるべきか

「エビデンスに基づいた子どもの腹部救急診療ガイドライン2017」では、嘔吐症状があっても、OS-1やアクアライトなどの経口補水液を飲ませることを推奨しています。個人的には、吐き気止めなどを使って少し落ち着いてくるまでは無理に飲ませなくてもいいように思いますが、、。

繰り返し吐いてる子に飲ませる場合は、それこそ上記の厳密なやり方での補給が望ましいでしょう。

 

食べ物は?

かつては「腸管安静をはかる」ための絶食がよいといわれていましたが、最近ではミルクや食事はなるべく早期に開始したほうがよいとされています。

 

各国ガイドラインに鑑みると、「糖質や脂質の高いものは控える」が原則です。
じゃあサラダチキンがいいのか? というと、別にそうでもないので、あまりこだわりすぎず一般に消化の良い食べ物(おかゆとかおうどんとか)でよいかと思います。ゼリーや果物とかも(ガイドラインではあまり推奨されていないけど)ありだと思います。バングラデッシュから3歳までの胃腸炎にはバナナがいいよ! というエビデンスも出ているので、この辺は、お子さんの好みや様子を見ながら進めていけばいいと思います。

 

完全に治癒するまでは、脱水と低血糖を回避することが目標なので、「いつも通りの食事量」はとれなくてもOKです。無理に食べると吐くので、少量ずつゆっくりと食べましょう。

 

 

長くなりましたので、今回はこの辺で。

次回は、胃腸炎の感染対策と受診の目安についてお話ししたいと思います。

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