妊婦さんの感染予防、サイトメガロウイルスの正しい知識をもとう!
先日Youtubeでもお話しましたが、妊婦さんが注意すべき感染症についてのお話です。
はじめに言っておきますが、めちゃくちゃ重要です!
それでいて、知らない人が大変多いです。
知識があるだけで特別なことをせずとも感染防御ができるので、妊婦さんだけでなく、パートナー、そして自分の周りに妊婦さんのいる方、保育園の先生、あとこれから妊娠する可能性のある人たちも、ぜひ知っておいてください。
サイトメガロウイルスとは?
コロナやインフルなんかと比べて耳にする機会の少ないサイトメガロウイルス。このウイルスはヘルペスとか水ぼうそう/帯状疱疹ウイルスなんかの仲間で、一度感染すると一生体内に居座り、周りにうつします。
とはいえ免疫不全などの基礎疾患がなければほとんど無症状なので、うつったからどうってこともなく、通常はそこまで警戒する必要はありません。大多数の人が気が付かないうちにいつの間にか感染しています。
ただし、妊婦さんが生まれて初めて感染した場合、おなかの中の赤ちゃんに感染して難聴、神経発達症(自閉スペクトラム症など)、てんかんなどを発症するという怖いウイルスです。
先天性難聴の実に5人に1人はサイトメガロウイルスが原因と言われています。
サイトメガロウイルスは、よだれ、おしっこ、母乳、精液などの体液中に排出されます。それらが口や膣などの粘膜に入ることで感染します。
たいていは幼児期に保育園などでうつし合うので、多くの人が物心つく頃には感染しており、妊娠する頃には、すでに抗体を持っていることが多いです。
ただ、衛生環境が整うにつれ、妊娠するまでに感染しない方も増えてきました。
1980年代には96%の妊婦さんが抗体を持っていたのに対して、2010年代には66%にまで低下しています。つまり、妊婦さんの3人に1人は生まれてから一度もサイトメガロウイルスに感染していないハイリスクな状態ということになります。
典型的な感染パターン
ハイリスクな妊婦さんがサイトメガロウイルスに感染する最も主要なパターンは「保育園に通っている上の子や他のこどもからもらう」です。
保育園での乳幼児の遊びはどうしても濃厚な接触が避けられませんので、こどもは高確率でサイトメガロウイルスに感染します。
サイトメガロウイルスに感染した子の食べこぼしを妊娠中のママがひょいと自分の口に入れたり、
食べ物・飲み物の共有をしたり、
口と口でキスをしたり、
おむつ替えをしたあと手を洗わずにものを食べたりすると感染します。
これらは普通に育児をしているだけでも起こりうることなので、意識して注意しないと危険です。
しかもやっかいなことに、サイトメガロウイルスの知識がない人から見ると、こどものよだれを避ける、おしっこを避ける、というママの姿は、潔癖だとか、愛情があれば気にならないのにとか、間違った解釈につながりがちです。
とにかく知名度が低い
2014年に発表された日本のある調査によれば、サイトメガロウイルスのことを知っている妊婦さんはたったの18%、感染対策まで知っている人は10%程度と言われています。
当の妊婦さんでこの数字なので、それ以外の人はもっと知らないと予想されます。
さらに、医師であっても知らない人が多いことがかなり問題になっています。
ある調査では小児科医&産婦人科医の半分以上がおむつ交換が感染リスクになることを知らず、逆に3分の1は皮膚と皮膚のふれあいだけで感染するという間違った認識をしていたという結果でした。
無知ゆえに、小児科医の中には、あろうことか先天性サイトメガロウイルス感染が発覚したこどもは保育園では隔離対応するように、というとんでもないアドバイスをしてしまうこともあるそうです。(誰でも持っている可能性が高く、誰もが人にうつす可能性のあるウイルスです。胎児期に感染したからと言って、隔離する必要はまったくありません。)
このように、知らないことが理由で間違った行動がとられ、結果として赤ちゃんを危険にさらしている現状があります。
でもこれは裏を返せば、正しい知識をもつことで、容易に感染を予防できるという伸びしろがたくさんあるということです。
まとめ
・おむつ交換後は必ず手洗いをしましょう
・こどもと食器を共有したり食べ残しを食べるのはやめましょう
・こどもと口と口でのキスをするのはやめましょう
・保育園管理者は、妊娠している保育士さんに3歳未満のお世話をさせるのはなるべく避けてください
・性交時はコンドームを使用しましょう
では、それと知らず上記のような行動をとってしまった場合はどうすればよいでしょうか? また、自分が抗体を持っているか調べるべき? 赤ちゃんが先天性サイトメガロウイルスに感染してしまったら?
次回はそのあたりのお話を書きたいと思います。