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赤ちゃんのワクチンを選んで接種したい方へ

[2026.01.05]

外来をやっていると、時々ワクチンを自分で選んで接種するという人に出会います。

ここ数十年間で赤ちゃんの定期接種ワクチンはかなり増えました。本数が多いだけに、「こんなに打って大丈夫?」という不安がよぎるのは当然のことです。

 

定期接種は義務ではないので、打つワクチンを取捨選択してはいけないということはありません。

 

ただし、世にはさまざまなデタラメ知識がいかにもそれらしく主張されています。そういったデタラメに流されて判断を誤るのは避けたいところです。

 

今回は予防接種を自分で選びたい方に、最低限知っておいてほしい考え方をお伝えしたいと思います。

※原則、一般的な推奨やかかりつけ医のおすすめに従うのがベストだと思います。あくまで、自分で根拠をもって取捨選択したい人向けの内容です。

 

科学的な思考とは

突然ですが、以下の文章を読んでどう思いますか?

「新しく認可されたあるワクチンを接種した後に死亡した人が後をたたない。このワクチンには有害物質〇〇が含まれており、とんでもなく危険な代物である。医療者はそれを分かっていながら金儲けのために接種を続けている。そんなワクチンをあなたは愛する我が子に打たせますか?」

 

これを読んで、「ワクチン接種しない方がいいのかな?」と不安に思う方は、ワクチン接種を自分で取捨選択すると失敗するかもしれません。

 

反対に「何の中身もない文だな、、、」と思えたら、科学的思考ができている可能性が高いです。

 

どういうことか、以下に説明していきたいと思います。

 

効果やリスクは比較して初めてわかる

「あるワクチンを接種した後に死亡した人が後をたたない」というのが事実だとしてもそれが「ワクチンのせいで」死亡したかどうかはわかりません。

 

これは「水を飲んだ翌日に死亡した人が後をたたない」と置き換えていただければわかりやすいと思います。

 

多くの人が死ぬ前日に水を飲むけど、水を飲んだせいで死んだわけではないですよね。

 

当たり前だろと怒られそうですが、これが当たり前と思えるのは、「水を飲んだ翌日に死ななかった人」が山ほどいることを知っているからです。そして「水を飲まなかったけど死んだ人」や「水を飲まなかったけど死んでいない人」も知っていて、結局水を飲むということと翌日死ぬということは全然関連ないよねってことが体感できているからです。

 

「ワクチンを接種した後に命を落とした。」という事実から、「ワクチンのせいで命を落とした。」という結論を得るためにはこのようなプロセスを踏む必要があります。

 

つまりワクチンを打った人と打ってない人を大勢集めて、ワクチンを打った後に死んだ人/生きてる人、打ってないけど死んだ人/生きてる人をカウントして、ワクチンを打った人の方がたくさん死亡したということを示す必要があります。

 

そういうのを調査するのが臨床研究でして、研究結果は医学論文として公表されています。これを読まないことには始まりません。

(SNSや書籍などで個人が主張しているワクチン推しや反ワクチンの言説は自分の知る限り9割方このプロセスがいい加減です。自分で言うのもなんだけど、、、)

 

というわけで自分で予防接種の是非を判断する場合、適切な医学論文を探して読むという工程は必須となります。

 

量の理論

有害物質が含まれる=危険なしろもの、といいたくなりますが、実際はそんなに単純ではありません。

 

毒には致死量というものがありますよね。どんな猛毒であっても致死量よりも少なければ命は落としません。もし仮に致死量をはるかに下回る量で、体内に蓄積されずすぐ排泄されるのであれば、それはもはや毒とは呼べないわけです。その場合は有害物質が含まれる≠危険なしろもの、となります。

 

お酒や塩で例えるとわかりやすいと思います。お酒も塩も一度に多量に摂取すれば命を落とします。でもお酒や塩そのものが「毒物」という扱いではないですよね? 大事なのは、「どれだけの量を摂取すると有害なのか」です。

 

冒頭の文章で言えばワクチンに含まれる「有害物質」の部分をもっと知りたくなりますよね。どれくらいの量摂取するとどのような症状がどれくらいの頻度で起きるのか、それはワクチンに含まれる量でも起きうるのか、などの情報が必要になります。量に関する情報なく含まれる物質自体を「有害物質」と言い切り、だから接種してはいけない、というのは非常に乱暴な理屈なのです。

 

たとえば、よく質問されるのは水銀です。ある種のワクチンにはエチル水銀(チメロサール) が含まれます。

 

水銀というとなんとなく怖いというイメージが先行してくるのではないでしょうか。しかしワクチンに含まれる水銀の量はせいぜいツナ缶1~2缶相当と言われており、普通に食事から摂取しうる量です。しかもマグロなどに含まれるメチル水銀とは種類が違って代謝が早いので、体内で蓄積されるリスクはむしろ低くなります。

 

ツナ缶やまぐろのおさしみが大好きでたくさん食べてる! でもワクチンの水銀はこわい、と思ってしまうのなら、それはリスク評価が正しくできていないということになります。

 

というわけでワクチンに含まれるいろいろな物質については、実際にワクチン接種で体内に入る量で危険が増加するのかどうかについて調べる必要があります。

 

金儲けの話

ワクチンだけでなく、美容系、かぜ診療、健診など、医師が金儲けに走っていてけしからん的な意見はしばしば目にします。

 

このことを根拠にワクチン接種すべきでないと結論づけるということは、「ワクチン接種することで医師がもうかる」→「本当はワクチンは受けない方が良いものである」という論理が常に成り立つという前提が必要になりますが、果たしてそうでしょうか。

 

人が仕事をする理由の一つは生きるためにお金を稼がなくてはならないからです。親の財産や不労所得だけで生きていける人を除いて、誰だってお金を稼いで生計を立てるために仕事をしています。いってしまえば世のほとんどの人が「金儲けのために」仕事をしているわけです。

 

しかし多くの人が同時に「いい仕事をしたい」「世の中の人のためになる仕事をしたい」と考えていると思います。

 

「お金が儲かれば仕事なんて適当でいい」と思っている人は確かにけしからんけれど「お金をいただいている以上相応の仕事をするぞ」と思っている人もいるわけですから、「お金が儲かるから必要のないワクチンを打ってる」は万人に通用する理屈とはいえません。

 

大切なのは、ワクチンの効果であって、それにより医師が儲かるか儲からないかはあんまり関係ないはずです。「金儲け」と「いい仕事」は両立するのです。

 

ていうか逆に金儲けを偽善だなんだと批判する人の中には、その批判を書籍にしてバズらせて金儲けしようとしている不届き者もいたりします。ひどい話です。

 

気持ちは無関係

金儲けの話にも通ずることですが、ワクチンの効果は個人的な気持ちには左右されません。こどものことを愛していようがいなかろうが、効果は一緒です。ただし人の行動は気持ちに大いに左右されます

 

なので、「愛するわが子に打たせますか?」みたいな言い回しは、ワクチンの効果について述べたものではなく、読み手の心をゆさぶる言葉といえます。ワクチンについての情報を集めていたはずが、ワクチンそのものの説明ではない文章に心を打たれてしまい、「ワクチンは打たない方がいい」という結論を出してしまってはなんにもなりません。

 

最近では「赤ちゃんのワクチンは生後半年で10何本も!」みたいな見出しでワクチンを批判している投稿をみかけました。これも痛い注射を10本以上打つなんて非人道的、というイメージで心揺さぶります。でもそんなことを言いだしたら薬で眠らせて腹を切る手術なんて卒倒しそうなもんです。

 

こうした心に刺さる文章は冷静にワクチンの効果を判断したい人にとってはノイズになります。科学的な考え方をする際は、このノイズを認識してうまくスルーすることが重要です。

 

とりわけSNSや医療系の書籍は、心に刺さる言い回しが多用されているので要注意です。

 

もしたくさん注射を打つことが気になるなら、「かわいそう」とか「非人道的」とかの感情論ではなく、「たくさん打つ痛みストレスがその子の今後の発達に影響を与えるかどうか?」とか「副反応のリスクが跳ね上がるか?」とかを調べ(ここでも医学論文を読みます)、それらのデメリットがワクチン接種で得られる効果を上回るのかどうかを検討します。

 

まとめ

以上、ワクチン接種をするかどうか、きちんと判断したい方がすべき考え方・作業工程について解説しました。まとめると

 

①ワクチンの効果(メリット)と副反応(デメリット)については、きちんと比較検討された医学論文を自分でたくさん読む
②気になる有害物質や添加物などがあれば、ワクチンに含まれる量が具体的にどのような危険を及ぼすのか調べる
③「心に刺さる言葉」はスルーする。

 

いかがでしょうか。

 

結構面倒くさいでしょ? 個人的には餅は餅屋で、かかりつけの小児科医に相談するのが一番手っ取り早いとは思います。あるいは厚労省と世界各国の公的な推奨を見比べて決める方がまだよいです。

 

それでもどうしても自分で納得して接種したいという方は、最低限、科学的思考のやり方を修得したうえで臨んでほしいものです。

 

繰り返しますが、SNSや医師個人の書いた書籍などを読み漁って自分で調べた気になっているのが最も危険です。もしそれで一般的な推奨から外れたやり方をしたいと思ってしまった場合は、どうか一度踏みとどまって、自分が本当に科学的に妥当な評価をできているのかどうか、自問していただければと思います。

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