皮膚治療がなかなかうまくいかない方へ
湿疹やアトピー性皮膚炎の治療は最重症でない限り小児科でも皮膚科でもどちらでも対応可能です。治療の特性上、重要なのは専門科よりも「通いやすい」「話しやすい」「治療目標をきちんと共有してくれる」などの条件が満たされていることです。
湿疹、アトピー性皮膚炎で受診する前にやるべきこと
受診前の準備として整えていただきたいことが3つあります。
①治療目標を定める
現在の標準的な治療は、かゆみを抑える→今ある湿疹を改善させる→きれいになった皮膚を維持する、の三段階で進んでいきます。自分が目指しているのが、単にかゆいときだけそれをおさえればよいのか、皮膚をきれいにしたいのか、それとも再発しないようにしたいのか、その目標地点を明確にすることが、治療成功のポイントになります。
目標設定について詳しくはコチラ→
②目標達成までは通院する覚悟を決める
きちんと治療しようと思うと、毎日のケア&お薬塗布を忘れずきっちりこなしつつ定期的に通院して現在の病状と治療方針を微調整していく必要があります。これは一言で言えばけっこう面倒くさいです。特にいったんかゆみが収まって皮膚がきれいになると、なんとなく受診するモチベーションも低下してしまいがちです。しかし、たとえ症状が落ち着いても、指示された時期にきちんと通院することが目標達成のためには非常に重要なことなんです。
③ステロイドに対する正しい知識をつける
「ステロイド忌避」というのが一つの治療課題になることがガイドラインにも記載されているくらい、必要以上にステロイドを不安に思ったり避けようとしたりする方々がいます(そしてその不安を煽るひとがネット上にはたくさんいます)。ステロイドに不安がある場合は、正しい知識をしっかり学んでから治療に臨む必要があります。
具体的な治療の流れ
治療は大きく分けて「寛解導入療法」と「寛解維持療法」の2つのフェーズからなります。
「寛解」というのは、見た目上湿疹が完全になくなってつるつるの状態を差します。
寛解導入療法
かゆみや湿疹がある状態から、つるつるの状態にしていきます。
湿疹やアトピー性皮膚炎の最大の増悪因子は実は掻いてしまうことです。かゆいところを掻きたいという欲求は非常に強力なので、自分の意思で掻かないようにするのはとても困難です。仮にそれができる子であっても、寝ている間に無意識に掻いてしまい悪化していきます。
そのためこのフェーズでは比較的強力な薬剤を使用して一気に皮膚を良い状態にもっていきます。経験上、きちんと治療すればかなり重症であっても1か月もあればかゆみが湿疹のほとんどない状態まで改善します。どうしてもかゆみが強い場合は、内服薬や注射薬を併用したりもします。
この時期のよくある失敗は、ステロイドを大量に塗るのを躊躇してしまって中途半端に改善と悪化を繰り返してしまうことです。そうして結果的にステロイドを塗る期間が長くなってしまうと「ステロイドを使うと長引く」「ステロイドでは良くならない」という誤解を持ってしまいがちです。ステロイドに悪いイメージができてしまうと、さらに治療に消極的になり、最悪の場合脱ステの路線に走ってしまうということです。
寛解維持療法
皮膚が完全によくなったと思えたら、そこからが本番です。
皮膚炎を再燃させないように、徐々にステロイドのランクを落としたり塗る頻度を減らしたり別の塗り薬を併用したりしていきます。試行錯誤しながら治療内容を選んでいくため、とても時間がかかります。しかし時間をかけてじっくり治療に取り組めば、きれいな状態をキープしつつ薬剤を少しずつ減らすことができ、最終的にはほとんど保湿だけでもよくなってきます。
この時期のよくある失敗は、皮膚の調子がよいとどうしても毎日薬を塗ったり定期的に受診するのがおっくうになってしまい、さぼりがちになってしまうことです。すると徐々に湿疹が再燃し、もう一度治療しようと思える頃には振り出しにもどっている、というパターンです。
寛解維持を数か月間~数年間キープできるようになるころには、お薬の塗り方や減らし方の感覚が身についているはずです。ここまでこれば、多少再燃したとしてもお薬だけもらって自分でコントロールをつけられるようになります。
ここまで来て初めて、治療目標詳細の項目で述べたような「受診のついでにたくさんのお薬をもらうだけ」ということができるようになるわけです。
受診予約する→
お薬以外でおうちでできること
薬による治療はもちろん重要なのですが、並行して皮膚を悪化させないような家庭でのケアも重要です。ここではガイドラインなどで示されている今日から自宅で始められるケアについてご紹介します。
①保湿
乾燥する冬だけでなく、梅雨時や真夏も毎日継続して保湿することが重要です。
入浴後がマスト、できれば朝も含めた1日2回以上できるとよいです。化粧水タイプ、泡タイプ、ローションタイプ、クリームタイプ、軟膏タイプなど色々剤型があるので、季節やお好みに合わせて選択できます。ちなみに、処方する保湿薬と市販の保湿薬ではそこまで大きな差はありませんので、市販のもので普段使いの保湿薬が用意できればわざわざ受診する必要がなく便利です。
コラム:赤ちゃんの肌は保湿すべきか?
②入浴・洗浄
原則として汚れは皮膚にとって良くないので、石鹸で洗い流すのが大切です。特に脇の下や首回りなどは洗いにくいので丁寧に洗います。石鹸が残ってしまうとかえってよくないので、すすぎは丁寧に十分に行います。
皮脂を除去しすぎるのも良くないので、何度も繰り返し洗うのは避けた方がよいです。熱いお湯も皮脂を過剰に流してしまい、かゆみも増強しますので、ぬるめのお湯を使いましょう。
摩擦も皮膚にダメージを与えますので、ごしごしこするような洗い方も良くないです。泡立てて、素手でほわほわっと洗うのが望ましいです。赤ちゃんの朝のぬれタオル拭きも、実は皮膚にとってはあまりよくないです。
③爪・掻破対策
皮膚の悪化要因の第一位が掻くことなので、爪を無力化することが重要です。こまめに切って短く保つ(深爪にはならないように!)、切るだけでなくヤスリ等で滑らかに整えるのが大切です。寝ている間にどうしても掻いてしまう場合は一時的に綿の手袋やミトンを使用するのも手です。
④衣類・寝具
ウールや粗い繊維はちくちく刺激になるので避けましょう。新しい衣類は必ず水通しをしてから着ましょう。洗剤が残らないようにすすぎは十分に行いましょう。
⑤環境調整
汗や乾燥は悪化要因になりえます。服装は暑すぎず寒すぎず、空調は加湿器や除湿器を活用して安定した環境を保ちましょう。
⑨生活習慣・教育
比較的大きな子でもこどもの保湿や塗り薬は大人がやりましょう。こども任せにすると、大抵うまくいきません。特にかゆみが落ち着いてからの塗り薬はこどもにとっては面倒くさいしべたつくしでいいことがない感じがしてしまいさぼりがちです。
それから意外と重要なのは、パパママも含めた家族全体でスキンケアを統一することです。入浴後にパパママが当たり前に保湿している姿をみせることで、こどもも自分が保湿をすることを受け入れやすくなります。
