子どもの夜尿症(おねしょ)は何歳から受診?原因・家庭でできる対策・治療を小児科医が解説
「小学生になったのに、まだおねしょがある」
「何歳までなら様子をみていいの?」
「病院を受診したほうがいい?」
「もうすぐ修学旅行があるので、それまでになんとかしたい」
こどものおねしょについて、このように悩んでいるご家庭は少なくありません。
日本の『夜尿症診療ガイドライン2021』では、「5歳以上のこどもが、寝ている間に月1回以上のおねしょをし、それが3か月以上続く状態」を夜尿症と定義しています。
ただし、5歳を過ぎておねしょがあるからといって、すぐに薬による治療が必要というわけではありません。
夜尿症は比較的よくみられるもので、年齢とともに自然に改善することも多い病気です。一方で、本人がおねしょを気にしている、家族の負担が大きい、宿泊行事が心配といった場合には、積極的に治療することが勧められています。
また、昼間のおもらしなど別の症状がある場合や、一度半年以上おねしょがなくなっていたのに再び始まった場合には、ほかの病気が隠れていないか確認することも大切です。
この記事では、
・夜尿症とは何か
・何歳まで様子をみてよいのか
・夜尿症の原因
・受診前に家庭でできること
・病院ではどんな検査をするのか
・デスモプレシンによる薬物療法
・アラーム療法
・修学旅行やお泊まりへの対応
について、小児科医が解説します。
夜尿症とは?何歳から「おねしょ」ではなく夜尿症?
冒頭でも紹介しましたが、日本の『夜尿症診療ガイドライン2021』では、夜尿症を次のように定義しています。
5歳以上のこどもで、1か月に1回以上のおねしょが3か月以上続いている状態
です。(ほかにも細かな条件はありますが)
「えっ、それならうちの子も夜尿症にあてはまる!」
と思った方も多いかもしれません。
でも、あまり驚く必要はありません。
夜尿症のこどもはけっこう多いのです。
ガイドラインで紹介されている単一症候性夜尿症の有病率は、
5歳:約15%
6歳:約13%
7歳:約10%
8歳:約7%
10歳:約5%
12~14歳:約2~3%
とされています。
つまり、
5歳なら6~7人に1人くらい
小学1年生ごろなら10人に1人くらい
高学年でもクラスに1人くらいいてもおかしくない
ということです。
思ったよりも多いと感じるのではないでしょうか。
夜尿症の原因は?「しつけ」や本人の努力の問題ではありません
まず、とても大切なことがあります。
夜尿症は、しつけが悪かったから起こるわけでも、本人の努力が足りないから起こるわけでもありません。
ガイドラインでも、夜尿症を「親のしつけの問題」「こどもの心理的な問題」と考えるのは誤解であり、その誤解を取り除くことが重要とされています。
夜尿症には主に、
1. 夜につくられる尿の量が多い
2. 夜間に膀胱へためておける尿の量が十分でない
3. 膀胱がいっぱいになっても尿意で目を覚ましにくい
という3つの要因が関係すると考えられています。
これらは、体や神経、膀胱機能などの発達の個人差によるところが大きいものです。
ですので、たとえば下の子や周りの友達がおねしょをしていなくても、
「お兄ちゃんなのにまだおねしょしてるの?」とか
「周りの子はみんなおねしょしないよ」とか
「夜中におしっこしたくなるならちゃんと起きてトイレ行って!」
などと責めるのは避けましょう。
夜尿症は自然に治る?何歳まで様子をみていい?
夜尿症は、年齢とともに少しずつ減っていきます。
ガイドラインでは、思春期までは1年間に約14%ずつ自然に軽快していくとされています。
つまり、夜尿症は「成長とともに自然と改善してくることが多い病気」です。
では、積極的に治療したほうがよいタイミングはいつなのでしょうか。
一つの大きな目安は、
「夜尿によって本人または家族が困っているかどうか」
です。
『夜尿症診療ガイドライン2021』でも、患者・家族が悩んでいる場合には積極的に治療することが推奨されています。
例えば、
・もうすぐ修学旅行やキャンプがある
・友達の家に泊まりに行けない
・本人がおねしょをとても気にしている
・毎朝の着替えや洗濯が大変
・兄弟と比べて本人が自信をなくしている
・家族も疲れてしまっている
といった場合です。
「病気だから絶対に治療しなくてはいけない」というより、本人と家族の生活をより楽にするために治療を考えるというイメージです。
こんなおねしょは、一度小児科で相談してください
夜尿症の多くは成長に伴って改善が期待されるものですが、中には昼間の排尿トラブルや別の病気が関係していることがあります。
特に次のような場合には、一度医療機関へご相談ください。
・小学生になってもおねしょが続き、本人や家族が困っている
・毎晩のようにおねしょがある
・昼間にもおもらしがある
・急に強い尿意を訴え、トイレまで我慢できない
・昼間の排尿回数が極端に多い、または少ない
・おしっこをするとき痛がる
・尿の勢いが弱い、排尿に時間がかかる
・便秘が強い
・半年以上おねしょがなかったのに、再び始まった
・異常にのどが渇き、水をたくさん飲む
・尿量が非常に多い
・体重減少や成長の問題など、夜尿以外にも気になる症状がある
特に、半年以上夜尿がなかったあとに再び夜尿が始まる状態を「二次性夜尿症」と呼びます。二次性夜尿症では、心理社会的な要因だけでなく、尿路感染症、糖尿病、尿崩症、睡眠時無呼吸症候群などの基礎疾患についても考える必要があります。
異常な口渇や体重減少などがある場合には、尿糖や血液検査など追加評価が必要になることがあります。
受診する前に家庭でできる6つの夜尿症対策
夜尿症の治療の基本には、生活習慣を整えることが含まれます。
ガイドラインでも、すべての夜尿症患者と家族に生活指導を行うことが推奨されています。
受診前からできることをご紹介します。
1.規則正しい生活を心がける
朝起きる時間、夕食、入浴、寝る時間をなるべく一定にしましょう。
夜間の尿量には、抗利尿ホルモン(ADH)というホルモンの日内リズムなどが関係しています。夜尿症では、この夜間の尿量調節も原因の一つと考えられています。
「必ず〇時までに寝なくてはいけない」ということではありません。
年齢に合った十分な睡眠時間を確保し、できるだけ毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きることを意識してみましょう。
2.日中に必要な水分をとり、寝る前は飲みすぎない
当然ながら、たくさん飲めばその分尿も多くつくられます。
特に寝る直前に多量の水分をとると、寝ている間につくられる尿が増える原因になります。
一方で、「おねしょをするから水を飲ませない」という厳しい水分制限はおすすめしません。
ガイドラインでも、デスモプレシン(後述する薬物治療)を使用していない時期に夕方以降の厳格な水分制限を行う十分な根拠はないとされています。一方、就寝2時間前、可能であれば3時間前までに夕食や主な水分摂取を済ませておくことは、夜尿を減らすための補助になる可能性があります。
ですので、日中は必要な水分をとり、夕方以降に水分が集中しないようにするという考え方がおすすめです。
もちろん夏の暑い日、運動後、発熱時、胃腸炎などで脱水が心配なときには、夜尿症よりも水分補給を優先してください。
3.夕食は薄味を心がける
夕食後の水分を減らしたくても、のどが渇いているこどもを叱って水分を我慢させるのはおすすめできません。
そもそものどが渇きにくい食事にしてみましょう。
特に夕食では、
・ラーメンのスープ
・漬物
・ポテトチップス
・塩辛いおかず
・味の濃い加工食品
などのとりすぎには注意しましょう。
夜間尿量の増加には塩分摂取量が関係するという報告があり、ガイドラインでも夕食時の塩分過剰を避けることが勧められています。
4.便秘がないかチェックする
意外に重要なのが「便秘」です。
便がたまった状態は膀胱の働きにも影響し、夜尿症や昼間のおもらしと関連することがあります。
ガイドラインでも、夜尿症では便秘の有無を確認し、便秘があれば評価・治療することが勧められています。特に昼間の排尿症状も伴う場合には、便秘への治療が推奨されています。
便が硬い、排便時に痛がる、何日も便が出ない、大きな便をするなどがあれば、便秘についてもご相談ください。
当院の「こどもの便秘」のページもあわせてご参照ください。
5.寝る前にはトイレへ
就寝時にすでに膀胱内に尿がたまっていれば、その分おねしょの可能性は高くなります。
寝る前のルーチンの一つとして、
歯みがき → トイレ → 就寝
など、毎日同じ流れをつくってみましょう。
無理に長時間おしっこを我慢して膀胱を鍛える「がまん訓練」は、現在は夜尿症の一般的な治療として推奨されていません。
また、昼間のおもらしなどを伴う場合には、排尿時の姿勢も重要です。足台などを置いて足がぶらぶらしない安定した姿勢で、力まずに排尿できるようにしましょう。
6.「排尿日誌」をつけてみる
夜尿症では、毎日の状態を記録すると治療のヒントが見つかることがあります。
例えば、
・おねしょがあった日
・夜尿の量
・昼間のおしっこの回数
・昼間のおもらし
・水分を飲んだ時間と量
・排便の有無
などを記録します。
排尿日誌・排便日誌・飲水記録は、夜尿症の状態を評価するうえで有用です。
排尿日誌はこちらからもダウンロードできます。
[https://onesho.com/assets/img/download/pdf/diary.pdf](https://onesho.com/assets/img/download/pdf/diary.pdf)
すべてを完璧につける必要はありません。
わかる範囲で記載して、受診するときに持参していただけると、その子に合った治療を考えるうえでとても役立ちます。
※夜中に起こしてトイレへ連れて行ったほうがいい?
これはよく聞かれる質問です。
毎晩決まった時間に起こしてトイレへ連れて行けば、その晩のおねしょを防げることはあります。
一方で、夜中に起こすことで夜尿症そのものが長期的に治りやすくなるかどうかについては、現在もはっきりしていません。
『夜尿症診療ガイドライン2021』でも、夜間に強制的に起こすことが夜尿症治療へどのような影響を与えるかは不明とされています。睡眠を妨げることで、むしろ夜間尿量が増える可能性を示す研究もあります。
ですので、夜尿症を治す目的で、保護者が毎晩無理に起こし続ける必要はありません。
ただし、修学旅行など「その日だけ何とかおねしょを避けたい」という場合には、短期間の実用的な方法として起こすことを検討する場合があります。
夜尿症でクリニックを受診したら何をする?
「おねしょだけで病院に行っていいのかな?」
と受診をためらう方もいます。もちろん大丈夫です。
夜尿症の診療では、いきなり薬を処方するのではなく、まずその子の夜尿のタイプや生活状況を確認します。
1.診察・カウンセリング
まず、「何に困っているのか」を一緒に整理します。
夜尿症は、診断がついたから必ず薬で治さなくてはいけない病気ではありません。
・夜尿の回数を減らしたい
・本人の自信を取り戻したい
・家族の洗濯の負担を減らしたい
・修学旅行までに対策したい
など、家庭によって目標はさまざまです。
そのうえで、
・夜尿が週に何回あるか
・これまで半年以上夜尿がなかった時期があるか
・昼間のおもらしがないか
・頻尿や尿意切迫感がないか
・便秘がないか
・水分のとり方
・睡眠の状態
・その他の病気や薬
などを確認します。
必要に応じて、夜尿以外に治療すべき病気が隠れていないか評価します。
2.尿検査
『夜尿症診療ガイドライン2021』では、すべての夜尿症患者に初期診療で尿検査を行うとされています。
尿検査によって、尿の濃さなどを確認するとともに、夜尿症以外の病気を疑う所見がないか評価します。
当院では必要に応じて朝起きて最初の尿を調べます。
ご自宅で採尿していただく場合には検査キットをお渡ししますので、次回受診時に持参していただきます。
異常なのどの渇き、体重減少などの症状がある場合には、尿糖や血液検査など追加の検査を検討することもあります。
3.生活習慣を確認する
前項の「おうちでできること」がまだできていないようなら、まずできるところから取り組んでいきます。
ただし、「全部完璧にやってください」という治療ではありません。
塾や習い事で夕食が遅い、兄弟がいて就寝時間をそろえるのが難しい、夕方にスポーツをしていて水分制限が難しいなど、家庭によって事情はさまざまです。
無理なく続けられる「いい落としどころ」を一緒に探します。
また、生活指導だけを長期間続けて、有効性の高い治療を必要以上に先延ばしすることは適切ではありませんので、ある程度やってみて効果が出ないようであれば次の治療にすすみます。
夜尿症の主な治療は「デスモプレシン」と「アラーム療法」
生活習慣を整えても夜尿が続き、本人や家族が治療を希望する場合には、積極的な治療を検討します。
代表的な第一選択の治療は
①デスモプレシン(商品名ミニリンメルト)による薬物療法
②アラーム療法(商品名ピスコ―ル、ウェットストップなど)
の2つです。
どちらも『夜尿症診療ガイドライン2021』で第一選択の治療の一つとして推奨されています。
夜尿症の薬「デスモプレシン」
デスモプレシンは、抗利尿ホルモンの作用を利用して、寝ている間につくられる尿の量を減らす薬です。
日本では口の中で溶かして服用する口腔内崩壊錠などが使用されています。
比較的効果が早く現れやすいため、
「修学旅行が近い」
「キャンプまでに何とかしたい」
といった場合にも使いやすい治療です。
デスモプレシンで大切なのは「水分のとり方」
デスモプレシンを服用すると、体から尿として出ていく水分が減ります。そのため、薬を飲む前後に大量の水分をとってしまうと、体の中の水分が過剰になり、血液中のナトリウム濃度が低下する「水中毒」「低ナトリウム血症」を起こすことがあります。重症の場合には、意識障害やけいれんにつながる可能性もあります。
そのため、デスモプレシンを使用するときには、薬を飲む前後の水分摂取について、医師から説明されたルールを必ず守ることが大切です。
発熱、胃腸炎、非常にのどが渇いている日、スポーツなどで水分を大量にとる必要がある日などには、薬を休む判断が必要になることがあります。
具体的な服用方法は診察時にご説明します。
夜尿症の「アラーム療法」
アラーム療法は、専用のセンサーを下着などにつけ、尿が出始めると音や振動で知らせる治療です。
おねしょが始まったタイミングでアラーム刺激を繰り返すことによって、少しずつ夜間の排尿パターンを変えていきます。
薬のようにその日から尿量を減らす治療ではないため、効果が出るまでにはある程度時間がかかります。
複数のランダム化比較試験をまとめた解析では、アラーム療法によって夜尿日数が減少することが示されています。
ただし、
・毎晩センサーを装着する必要がある
・アラームが鳴っても本人が起きない場合は家族が起こす必要がある
・隣で寝ている家族も起こされる
・効果が出るまで根気よく継続する必要がある
など、家族の協力が不可欠な治療でもあります。
デスモプレシンとアラーム療法、どちらがいい?
「薬とアラーム、結局どっちがいいんですか?」とよく聞かれます。
実際には、どちらかがすべてのこどもに優れているわけではありません。
一般的には、
「デスモプレシン」
・比較的早く効果が出やすい
・宿泊行事など期限がある場合に使いやすい
・毎晩薬を飲む必要がある
・水分摂取について注意が必要
・治療終了後の再燃がアラームより多い可能性がある
「アラーム療法」
・効果が出るまで時間がかかる
・毎日のように夜尿がある子に良い適応
・毎晩の装着が必要
・家族の負担が比較的大きい
・治療終了後も効果が持続する可能性がある
といった違いがあります。
病状、夜尿の頻度、本人の年齢、家庭の生活スタイル、本人と家族の希望などから、どちらがより適しているかを相談して決めていきます。
どちらか一方で十分な効果が得られない場合には、デスモプレシンとアラーム療法を併用することもあります。
修学旅行・林間学校・キャンプのおねしょが心配なときは?
夜尿症の受診理由として非常に多いのが、「お泊りがあるので、それまでに何とかしたい」という相談です。
一般的な治療+短期間である程度結果を出す+学校と協力してできる対策を考える
など、その子の状況に合わせた対応をしていきます。
「お泊まりがあるから」という理由だけでも、遠慮なくご相談ください。なるべく早めにご相談いただくことで、より結果が出やすくなります。
夜尿症治療を始めたら、どのくらい通院する?
治療を開始したら、数週間~1か月程度の間隔で外来受診しながら、治療や生活改善がうまくいっているかどうか確認します。うまくいかなければ、その原因と対策を考えていきます。
一度治療を始めたらずっと同じ治療を続けるわけではなく、効果や家庭の負担をみながら、治療内容を調整していきます。
治るまでの期間は様々で、数か月で良くなる子もいれば数年かかる子もいます。
必要があれば専門病院へ紹介します
ほとんどの夜尿症は小児科の外来で評価・治療できます。
一方で、適切な治療を続けてもなかなか改善しない場合や、神経疾患や泌尿器疾患など別の病気の合併が疑われると判断した場合には、小児泌尿器科などの専門医療機関へご紹介します。
よくある質問
おむつを使うと夜尿症が治りにくくなりますか?
現在のところ、おむつを使うことで夜尿症が治りやすくなる/治りにくくなるといえる十分なエビデンスはありません。
洗濯など家族の負担が大きい場合には、本人が嫌がらなければおむつを使用するのも一つの選択肢です。
夜尿症は小児科と泌尿器科のどちらを受診すればいいですか?
まず小児科で相談して構いません。夜尿症は小児科でも一般的に診療する病気です。
小児泌尿器科などで専門的な検査が必要と判断した場合には、適切な医療機関へご紹介します。
夜尿症で困っているときはご相談ください
夜尿症は、
「こんなことで病院に行っていいのかな」
「成長すればそのうち治るのでは?」
と、受診をためらわれることの多い症状です。
たしかに、夜尿症は成長とともに自然に改善することも多く、すべてのこどもが治療を必要とするわけではありません。
しかし、本人がおねしょを気にしている、家族の負担が大きい、小学生になっても頻繁に続いている、修学旅行やキャンプが心配、などがあれば、それだけで十分相談する理由になります。
夜尿症は、しつけや本人の頑張りの問題ではありません。
本人を責めず、その子とご家庭に合った方法を一緒に考えていきましょう。
夜尿症についてお困りの方は、小児科外来でお気軽にご相談ください。
参考文献
日本夜尿症学会(現:日本夜尿症・尿失禁学会)編.『夜尿症診療ガイドライン2021』.診断と治療社,2021.Minds診療ガイドラインライブラリ掲載。
